資源生物科学科

BIORESOURCE SCIENCES

特徴・キーワード

生物のしくみを知り、食の未来を切り拓く。生物の巧みな生存戦略を解明し、人類の食をグローバルに支える

資源生物科学科は革新的な食料生産と遺伝資源の開発・保存を可能とする最新のライフサイエンスを学び、食料生産や地球環境の保全などにまつわるグローバルな問題の解決をめざす学科です。生物が長い進化の歴史の中で培ってきた生体機構や生存戦略を学び、専門性と国際的視野をもって食料・環境などの諸問題解決にいどむ人材を育成します。
たとえば、植物ホルモンやその情報伝達機構を分子、個体レベルで研究し、穀物や野菜の収量を飛躍的に増大させる方法を開発します。また、実験動物を使って神経系や内分泌系、発生などを研究し、動物生産へと応用します。あるいは、植物、昆虫、微生物の間の寄生や共生といった複雑な生命現象を個体、集団レベルで研究します。いずれも、生物の能力を資源として捉え、それを最大限に活かして食料を安全に生産し、人類の幸福に貢献することが目標です。
本学科では、生物学、化学を基礎として、遺伝学、生理学、形態学など、生物を多面的に解析し、理解するための知識を身につけます。また、食料生産や品質の向上につながる最新の知識や技術、生産や流通に関する社会科学、地球規模で起こっている食と環境にかかわる課題などを学びます。生物・薬品・食品関連産業や国家・地方公務員の技術職と総合職として必要とされる能力を習得します。

ラボからフィールドへ

安全な食料の効率的な生産は、21世紀の人類の食をグローバルに支えるうえで極めて重要です。ラボではモデル動物やモデル植物を用いて、動植物の繁殖や成長発達のメカニズムを研究し、食料生産につながる知識と技術を身につけます。そして、フィールドにおいて、実際の食料生産の基盤となる応用研究を展開します。

たとえば、モデル動物であるマウスから得た受精卵(右図)から、発生工学の手法により特定の細胞で緑色蛍光タンパクを発現するトランスジェニック動物を作出し、その機能を解析します。

遺伝資源

ひとつひとつの生物種を遺伝資源ととらえるのはなぜでしょうか?それは生物が持つ遺伝子の多様性が食料生産の基盤となっているから。人類は近縁種の交配などによる品種改良を通して、バラエティあふれる食料生産を可能としてきました。動植物のゲノム解読の進む中、遺伝子情報をもとにした生物資源の開発・保全に必要な知識を幅広く学びます。

たとえば、染色体(右図)やゲノム情報を解析して、鳥類の進化の謎に迫る研究や、数多くのニワトリ品種を保存するプロジェクトを展開しています。

アグリバイオ

生物の持つ機能を最大限に引き出して、食料生産の効率化や品質の向上を図ります。そのためには、動植物の生理機能を明らかにしなければなりません。遺伝子にコードされたタンパク質はどのような機能を持っているのかを遺伝子工学や細胞工学を利用して解き明し、バイオテクノロジーと農業を融合した革新的な食料生産を可能にします。

たとえば、病原菌が感染すると、免疫機能を発揮してこれを排除しようとします。生理学的、生化学的および分子生物学的手法を用いて解析し、生物が持つ巧みな生体機構や生存戦略に迫ります。

生物の相互関係

動植物に病害を引き起す微生物やウイルスがいる一方、根粒菌など生物の生存に役立つ微生物やウイルスも存在しています。動植物が持っている病害抵抗性や生体防御機構、寄生・共生といった複雑な生命現象を解析し、食料生産へと応用するための知識と技術を身につけます。

ガの幼虫に寄生するハチが卵を産み付けるとき、ハチに共生しているウイルスが一緒に入り卵の発育を助けます。このような生物の相互作用の理解は、環境に大きな負荷のかからない害虫制御を可能にします。

品種改良

食料生産の歴史は、品種改良の歴史です。人類は動植物を交配、改良して食料を増産してきました。人口増加の続く未来の食料危機に備え、さらなる多収化をめざす研究開発を続けています。また、食料生産を拡大するためには、これまで農地として適さないとされてきた環境にも対応した新品種の研究開発がますます重要となっています。ラボとフィールドでの研究を通じて、食料生産や環境保全などにまつわるグローバルな問題の解決について考える力を養います。

植物ホルモンのひとつジベレリンは植物の草丈を制御しています。主要穀物であるイネを材料に、植物体内でのジベレリン合成量や情報伝達の変異を明らかにし、より多くの収穫が得られるイネの作出に成功しています。

教員メッセージ

池田 素子教授 
農学博士
昆虫と昆虫ウイルスの未知なる生命機能をさぐり、生物資源としての昆虫と昆虫ウイルスの活用をめざしています。

 地球上の生物でもっとも種が多く、繁栄している昆虫。私たちの研究室では、昆虫と昆虫ウイルスが持つさまざまな未知の生命機能を研究し、その成果をもとに、昆虫と昆虫ウイルスを有効に活用するための理論を築くことをめざしています。これまでに昆虫の発生、変態、休眠の仕組みや、昆虫ウイルスが増殖する仕組みを、遺伝子レベルで解明してきました。
 現在、私たちのグループでは、特定の昆虫を宿主とするウイルスの構造や増殖の仕組みを、分子や細胞レベルで研究し、昆虫ウイルスの新たな利用法を探求しています。ウイルスが好みとする昆虫の種類や昆虫体内の組織はどのように決定されるのか。ウイルスは昆虫にどのように病気を起こし死に至らしめるのか。昆虫はウイルスの攻撃をどのような技を使ってかわしているのか・・・。
 この壮大で巧妙なドラマを繰り広げているウイルスと昆虫の遺伝子を見つけ、その機能と役割を明らかにし、昆虫とウイルスによる生命の駆け引きの仕組みを解明しつつあります。そしてこれらの研究を通して、昆虫と昆虫ウイルスの特異な生物機能を開発し、有用物質の生産や害虫防除のための技術開発などに貢献したいと考えています。

中園 幹生教授 
博士(農学)
世界の食料問題の解決をめざして、植物がどのように環境ストレスを感じて、適応するのかを解明しています。

 地球温暖化・気候変動や世界人口の増加などの問題と相まって、世界の食料問題はますます深刻化すると予想されています。この問題を解決するために、農学の果たすべき役割は極めて大きいと言えます。
 作物の生産量を増やすためには、主に二つの方法が考えられます。一つめは作物の食べる部分(コメなど)の量を増やすための方法で、二つめは病気、害虫、環境ストレスなどによる作物生産量の損失を防ぐための方法です。特に環境ストレスによる作物生産量の損失は甚大で、さまざまな環境ストレスに強い作物をつくることは食料問題を解決するための重要な戦略です。
 地球規模の気候変動によって、世界各地で干ばつや洪水が頻発すると危惧されています。私たちは、環境ストレスの中でも大雨が降ったときの作物の湿害・冠水害の問題を解決するための研究を行っています。イネを除く世界の主要作物のほとんどが、土壌が過湿状態になると根が酸素不足になり生育不良を起こします。これらの作物に耐湿性・冠水抵抗性を与えるには、作物の低酸素ストレスに対する応答機構について理解を深める必要があります。これらの研究によって得られる知見は、作物の耐湿性・冠水抵抗性を高め、作物の増産に貢献できると考えています。

吉村 崇教授 
博士(農学)
鳥類、哺乳類の光周性を制御する遺伝子を世界で初めて発見。その瞬間に立ち会えた時の興奮は、研究者だけに与えられた特権かもしれません。

 自然界の動物は、冬眠や渡り、毛の生え変わりなど、季節の変化にみごとに対応した正確な生体リズムを刻んでいます。アリストテレスもこの変化に気づいていましたが、日照時間(日長)の変化との関係が報告されたのは1920年。以来、さまざまな動植物の日長の変化に応じた生理機能の変化(光周性)の研究が進むようになりました。
 しかし光周性のメカニズムが遺伝子レベルで明らかにされたのはごく最近のことです。とくに私たちの研究室がウズラやマウスを研究モデルとして光周性を制御する遺伝子を世界で初めて特定してからは、動物が視覚を司る光受容器とは別の新規な光受容器で光を感じ取り脳に春を告げるホルモン合成を指示していることが明らかになってきました。光周性を制御する遺伝子がわかったので、日長の違いをどう認識しているのかを遺伝子レベルで明らかにする研究をさらに進めています。
 ニワトリ、ウズラは牛や豚に比べて少ない餌で短期間に成長し、宗教的な禁忌もないので、私たちの研究成果は世界の食糧問題の解決に貢献できます。さらに季節性感情障害という人の病気にも貢献することが期待され、その応用の世界が広がりつつあります。

竹下 広宣准教授 
博士(農学)
農業経済学をベースに、理論とともに現実の課題に真摯に向き合い、「食」の安全と安心、農業の発展に貢献していきます。

私たちの研究室で取り扱うテーマは、食料に係る経済問題全般です。その中で、私が力を注いでいるテーマは2つあります。1つは、消費者の食品購買行動の分析です。これは消費者が食品を選ぶときに情報をどのように、どの程度利用しているのか、または、正しい食品情報を消費者に届ける社会的なしくみはどうあるべきか、などを研究しています。消費者が正しい食品情報に等しくアクセスできて初めて、「食」の豊かさや安全性が守られるのですが、現実には情報の格差やゆがみのせいで「無知から生じるコスト」が発生しています。このような課題に対して、私たちは解決への処方箋を提案しています。
 もう1つは、農業政策のあり方を、国際比較を通じて研究することです。この研究は、現在、酪農業に焦点をあて取り組んでいます。自由貿易が拡大する中、これからどういう酪農経営をめざすべきか、農家を支える制度はどうあるべきかなどを行政に提言、社会に発信できるよう研究しています。この分野は理論的な研究だけでは正解を導けません。農業の現場に足を運び、地域ごとによって異なる社会的な特性をしっかりと踏まえて、あるべき姿を追求しています。  研究室では留学生も含め、経済学、統計学、心理学、社会学などを駆使し、「食」の安全や安心、農家の発展にいかに貢献できるかを熱く議論を重ねています。

担当研究室一覧(2022年9月1日現在)

植物生理形態学
  • 谷口 光隆 教授
  • 三屋 史朗 准教授
  • 大井 崇生 助教

資源植物の構造と機能およびその環境応答機構に関する超微形態学的・生化学的・分子生物学的研究。

植物遺伝育種学
  • 中園 幹生 教授
  • 高橋 宏和 准教授

栽培植物の系統分化、形態形成、遺伝子発現および新機能開発に関する発育遺伝育種学的並びに生物工学的研究。

作物科学
  • 近藤 始彦 教授
  • 矢野 勝也 准教授
  • 杉浦 大輔 講師

作物生産の生理・生態学的解析、とくに環境応答・資源獲得に関する研究。

園芸科学
  • 松本 省吾 教授
  • 白武 勝裕 准教授

園芸作物の生産性向上のためのバイオテクノロジーおよび生理学・生化学・分子生物学的研究。特に、花器官の形成、開花、花色に関する生理、また、果実の結実生理および糖や二次代謝産物などの物質蓄積の解明とその制御。

植物病理学
  • 竹本 大吾 准教授
  • 千葉 壮太郎 准教授
  • 佐藤 育男 助教

植物病原体の感染に対する植物の生体防御の機構と機能に関する生理学、生化学および分子生物学的研究。

植物免疫学
  • 吉岡 博文 准教授

植物-病原菌相関で誘導される植物免疫の分子機構に関する研究。

耕地情報利用
  • 村瀬 潤 教授
  • 土井 一行 准教授
  • 西内 俊策 助教
  • 沢田 こずえ 特任助教

作物の遺伝情報、形態、生理特性、生産物の収量や品質、土壌や気象等の生育条件等の様々な情報を収集し、それらの関係性を情報学的手法で解析することで有益な情報を抽出し、品種改良や栽培管理の改善を通じて作物生産を向上させるための研究。

食料経済学
  • 徳田 博美 教授
  • 竹下 広宣 准教授
  • 三浦 聡 助教

食料・農業問題に関する理論的・実証的研究および地域資源管理、農業の多面的機能に関する学際的研究。

植物遺伝子機能
  • 芦苅 基行 教授
  • 永井 啓祐 助教

高等植物における環境適応と生存戦略に関する分子生物学的研究。

発生学・システム植物学
  • 辻 寛之 教授
  • 山内 卓樹 准教授

高精細イメージングと多階層オミクスを駆使して花と根の発生をシステムとして理解する。
花芽分化の決定因子・フロリゲンの分子機能解明。植物成長と環境適応を支える根の組織構造の解明。

植物ゲノム育種
  • 佐塚 隆志 教授/岡田 聡史 助教

環境・エネルギー・食の問題など、現代社会の課題解決を目指し、作物ゲノムビックデータを活用しつつ、基礎研究から社会実装を見据えた応用研究まで一気通貫型の先駆的育種学研究を展開する。

生物産業創出
  • 上口 美弥子 教授
  • 野田口 理孝 准教授
  • 黒谷 賢一 特任講師

植物資源の価値化・保全へ向けた、接ぎ木、植物の全身性シグナル伝達メカニズムを中心とする基礎から応用までの研究。

動物遺伝育種学
  • 隅山 健太 教授
  • 石川 明 准教授
  • 山縣 高宏 助教

家畜、家禽、実験動物などを対象とした動物の遺伝学・育種学を基盤として、量的形質の遺伝子支配の解明、有用遺伝子資源の発掘・利用、実験動物の開発・利用、などに関する研究を通じ、食と健康の質的向上を目指す。

ゲノム・エピゲノムダイナミクス
  • 一柳 健司 教授
  • 大谷 仁志 助教

動物におけるエピジェネティックな遺伝子発現制御およびレトロトランスポゾン発現制御に関するゲノム網羅的な研究(エピゲノム解析)。減数分裂の制御機構の研究。表現多様性のもととなるエピジェネティックな多様性に関する研究。

動物形態学
  • 本道 栄一 教授
  • 飯田 敦夫 助教

哺乳類および鳥類の神経統御と生殖制御に関する器官を中心とした生体構造の機能形態学的研究。

動物統合生理学
  • (兼)吉村 崇 教授
  • 大川 妙子 准教授
  • 金 尚宏 特任講師
  • 塚田 光 助教
  • 中山 友哉 特任助教
  • CHEN Junfeng 特任助教

脊椎動物(哺乳類、鳥類、魚類)の季節適応機構と概日時計機構の解明。季節繁殖や概日時計の制御を通じた動物生産性の向上とヒトの健康の増進に関する研究。ニワトリにおける成長制御と成長因子発現調節に関わる研究。

動物生殖科学
  • 束村 博子 教授
  • 上野山 賀久 准教授
  • 井上 直子 准教授

生殖機能の制御メカニズムに関する神経内分泌学的基礎研究とそのメカニズムを利用した畜産や創薬への応用研究。

動物栄養科学
  • 村井 篤嗣 教授

代謝性疾患(2型糖尿病など)の原因遺伝子と栄養学的制御因子の解明。ビタミンCの新たな生理機能の探求。鳥類の卵胞における物質輸送機構の解明。穀物飼料資源の生理的機能性の探求。

動物生産科学
  • 大蔵 聡 教授
  • 松山 秀一 准教授
  • 中村 翔 特任准教授

反芻家畜の生理機能の調節機序に関する基礎研究とその機能を利用した動物生産にかかわる応用研究。

鳥類バイオサイエンス
  • 西島 謙一 教授
  • 奥嵜 雄也 助教

脊椎動物の四肢の発生と形態形成・進化の分子機構の研究。鳥類が持つ多様な生命現象を支配する遺伝子の同定とその機能の解明。遺伝子改変技術を用いた鳥類モデル動物の作出と利用に関する研究。

水圏動物学
  • 山本 直之 教授
  • 阿部 秀樹 准教授
  • 後藤 麻木 助教
  • 萩尾 華子 特任助教

水産動物の神経系、感覚器、運動器、ペプチドニューロンに関する形態学的、生理・生態学的、進化行動学的研究。

資源昆虫学
  • 池田 素子 教授
  • 浜島 りな 助教

昆虫の発生、変態、休眠などに見られる高次機能の発現および昆虫ウイルスの増殖に関する研究。

害虫制御学
  • 水口 智江可 講師

生理学・分子生物学的アプローチを使った農業作物に害をおよぼす昆虫類の制御機構に関する研究。