地下水利用に伴うメタンの放出
地下深く浸透したメタンは最終的に地下水層に到達すると考えられることより、愛知県下各地で農業用地下水を131点採取し、そのメタン濃度を測定したところ、半数以上の地下水試料からメタンが検出され、その平均メタン濃度は1.58mgC/L(最高18.4mgC/L)であった(図18参照)。地下水を利用すれば溶存メタンは大気へ放出されることになり、その年間放出量は調査した地域(8.6万ha)の農業利用に伴って20.0t、日本全体では約6.6千tにも達すると見積もられた。メタンの検出された地下水の水質(Eh, COD, Fe2+, Mn2+, NH4+, NO3-)と検出されなかった地下水水質は顕著に異なり、前者ではEh, NO3-濃度が低く他の項目は高い値であった。

- Watanabe, A., Kimura, M., Kasuya, M., Kotake, M. And Katoh, T. : Methane in groundwater used for Japanese agriculture: Its relationship to other physico-chemical properties and possible tropospheric source strength. Geophys. Res. Letters, 21, 41-44 (1994)
水田から発生するメタンの起源、メタンの土壌中での動態にもどる
2-1. 土壌中メタンの透水による心土への移行
2-2. 大気への発生量と心土への移行量の関係
2-3. 土壌中のメタン存在量と大気への発生量の関係
2-4. 心土での嫌気的メタン分解
2-5. 心土におけるメタン分解に関与する微生物の生態
2-6. 地下水利用に伴うメタンの放出
2-7. 作土・心土中での嫌気的メタン酸化の機構推定