脊椎動物の染色体を構成する反復DNA配列の構造と進化に関する研究


私たち哺乳類のゲノムは約30億塩基対で構成されていますが、アミノ酸をコードする遺伝子領域は全ゲノムの3 %以下に過ぎません。残りの多くは遺伝情報をもたない反復配列によって構成され、その量はゲノムの50-60%を占めています。鳥類のゲノムサイズは哺乳類の約40%と小さく、哺乳類に比べてゲノム中に占める反復配列の割合は非常に低いという特徴をもちます。反復配列は、動原体や染色体の介在部や末端部のヘテロクロマチンを構成している部位特異的な縦列型反復配列と、主にレトロトランスポゾンに由来する散在型の反復配列に大別できます。縦列型反復配列は、キネトコア形成時におけるセントロメア結合タンパク質との相互作用、分裂期の染色体の正確な分配、染色体の安定性の維持などに重要な機能をもつことから、これらが染色体の高次構造の形成とその安定化に重要な働きをもつだけでなく、核型の変化や種分化に深く関与している可能性が示唆されています。散在型反復配列の中でも、non-LTRレトロトランスポゾンの一つであるLINE(long interspersed nucleotide element)は真核生物のゲノムの主要な構成成分であり、逆転写を介して転移増幅することが知られています。そして、ゲノム中に散在することで不等交叉を誘発し、逆位や転座、欠失などを引き起こすことが予想され、また、転移する際にプローモーターやエンハンサー、特定の機能ドメイン領域の導入部位に持ち込み、またprocessed pseudogeneを形成するなど、遺伝子の機能進化にも影響を及ぼしていると考えられています。したがって、染色体を構築するこれらの反復配列の進化を探ることはゲノム進化を解明する上で有効な手段の一つであることから、私たちは、広く爬虫類、鳥類、哺乳類の数多くの種を対象として、様々な高度反復配列をクローニングし、その構造やコピー数、染色体上の位置、塩基置換の速度やゲノム中での存在様式とメチル化の程度などを調べることによって、核型進化と反復配列の分子進化の関連性を明らかにしたいと考えています。(詳しい研究内容の紹介はこちら