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 当施設における標本収集活動の概要が、雑誌に報告されています。
 これらの報告をPDF形式でご覧いただくことができます。



 《 野生動物を主体とした標本に関する報告 》

名古屋大学大学院生命農学研究科附属フィールド教育研究支援センター
設楽フィールドにおける標本収集活動について


川田伸一郎,萩原聖子,織田銑一

Special Publication of Nagoya Society of Mammalogists. No.7 pp83-112, 2005





 《 飼育家畜の標本に関する報告 》

名古屋大学大学院生命農学研究科附属フィールド教育研究支援センター
設楽フィールドにおける飼育家畜の標本収集活動


萩原聖子,川田伸一郎,安藤洋,築地原延枝,織田銑一

Special Publication of Nagoya Society of Mammalogists. No.8 pp87-101, 2006





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 動物標本は動物の未知な生物学的特性を後世に伝えるための知的財産です。

 動物の死体という一般に「廃棄物」として扱われるものから研究成果を生み出すということは、動物資源を効果的かつ持続的に利用するという観点からも重要であるのです。
 このような活動は一般に博物館において行われている作業ですが、より研究に密着した存在である大学においても無視されるべきではないと考えられます。

 当施設(旧附属山地畜産実験実習施設,Highland Animal Experimental Station; HAES)では、系統維持されている家畜(口之島牛、シバヤギなど)の死亡個体を始めとして、標本作成活動を行っています。
 また1995年以来、野生動物の交通事故死体や狩猟個体などの回収、およびそれらの標本作成も行ってきています。
 さらにこの活動は1998年以降、動物園や水族館での飼育個体や各市町村の有害駆除によって捕獲された個体の回収にまで拡張され、施設で研究活動を行う学生によって標本の作成・管理が行われています。
 このようにして収集された標本は所属学生の研究に用いられるだけでなく、外部研究機関に研究用サンプルとして提供されているものも含まれます。


収蔵標本は以下のカテゴリーに大別されます。

  1.家畜維持個体
当施設で系統維持されている口之島産野生化牛、シバヤギなど。

  2.事故死体
主に所属学生が名古屋−設楽町を移動する際に拾得されたものが多い。 その他、近年では私たちの活動を知る設楽町内の住民の方からの提供も多い。 また三河湾沿岸でストランディングにより死亡したスナメリなどの海棲動物も含まれる。

  3.市町村などの有害駆除個体
近年愛知県内でもアライグマ、ハクビシン、ヌートリアなどの外来種問題が取り上げられ、捕獲駆除されている。 また県による特定鳥獣保護管理計画によって駆除されたニホンザル、イノシシ、シカなどの大型動物も対象としている。

  4.動物園・水族館の飼育個体
展示動物の死亡個体のうち、特に用途がなく処理が困難なものを回収している。カモシカ類、アザラシ、トドなど大型のものが多い。

  5.捕獲個体
所属学生のテーマにより、モグラ類、ネズミ類など小型のものが多い。また狩猟により捕獲されたイノシシ、クマなどの提供もあり、最も大型のものでは千葉県和田浦漁港で夏季に捕獲が行われるツチクジラの頭骨がある。


 このように周辺の方々からのご協力を得つつ、様々な種の動物標本が蓄積されるに至っています。
 標本の主なものは骨格標本ですが、一般に骨格標本の作成には個体の肉質部を煮る、あるいは腐敗させるといった作業が必要であり、このような活動を行うために都市部からは離れた設楽町山間部にある当施設が有効に機能していることは、ご理解いただけると思います。

 前に述べたように「動物標本の収集及び管理」は博物館業務の一つです。
 当施設は正式な博物館ではありませんが、この活動は必ずしもそのような外枠がなくても可能であると考えています。  「そのままでは廃棄される動物の死体を将来にわたって利用できる形にして保存管理すること」には機関や社会的名称は必ずしも不可欠ではないからです。
 21世紀という無駄の多い時代に「もったいない」という感覚を取り戻し、私たちの分野で後世に何が残せるか今一度考えてみたいと思っています。
 動物標本にかかる活動は「今やる」さらに「やり続ける」ことによって初めて標本が蓄積され、その蓄積こそが今後の研究における利用を実現します。  そしてこのように現在と合わせて将来の研究を支えることも大学の使命のひとつだと考えています。