動物遺伝制御学研究室
Laboratory of Animal Genetics
Laboratory of Animal Genetics
高等脊椎動物における量的形質の遺伝的基盤の解明に関する研究
マウスの体重や成長関連形質は、典型的な量的形質であり、1940年代から量的変異の複雑な遺伝的基盤を明らかにするためのモデル形質として使用されてきました。当研究室では、今までに、フィリピンで捕獲された野生マウス(Mus musculus castaneus)と世界中で汎用されている古典的な近交系(classical inbred strains)の一つであるC57BL/6Jマウスとの間で戻し交雑群約380個体を生産しました。野生マウスは小型で、C57BL/6Jの約60%の体重しかありません。また、野生マウスを用いた理由は、既存の近交系マウスの非常に限られた遺伝子プールには存在しないユニークなQTL遺伝子を野生マウスの未開拓な遺伝子プールから見つけ出すためです。生後3週齢(離乳時)から10週齢(成体)までの各週齢体重および1-3、3-6と6-10週齢間の体重増加量に関してゲノムワイドQTL解析を行いました。その結果、24個の主効果並びにエピスタシスQTLsを13本の染色体上に位置づけることに成功しました。
24個のQTLsの内、最も遺伝子効果の大きい第2染色体上のQTL(Pbwg1と命名)をC57BL/6Jマウスに導入したコンジェニック系統(B6.Cg-Pbwg1と命名)を樹立しました。樹立したB6.Cg-Pbwg1の表現型の特徴解析を行うとともに、B6.Cg-Pbwg1とC57BL/6J系統間F2交雑群を作出し、Pbwg1並びに成長関連形質(臓器重量など)に関与するQTLsのファインマッピングを行いました。その結果、驚くことに、44 Mbという限られたゲノム領域内に9個のQTLsを位置づけることに成功しました。QTLの責任遺伝子を同定するために、現在、QTLの存在領域を狭くするためにサブコンジェニック系統を樹立し、解析を進めています。
また、最近、体重のヘテローシス(雑種強勢)に関わる単一の超優性QTLをマッピングすることに成功しました。スーパーで売られている農産物・畜産物のほとんどはヘテローシスという100年以上前に発見された遺伝現象を利用して生産されています。しかし、ヘテローシスに関わる遺伝子は動植物において同定されていませんし、その分子メカニズムは全く不明です。したがって、ヘテローシスQTLの責任遺伝子を特定できたら、すごいことになるかも???
“量的形質の遺伝的基盤の複雑さ”についてもっと知りたい人は、NAGOYA RepositoryのこちらのサイトからPDFファイルをダウンロードしてお読みください。
QTL解析から責任遺伝子同定へ至る遠い道のりは以下の図の通りです。
