土壌有機物、根分泌物、施用有機物(稲ワラ)の各寄与率

 土壌有機物の寄与率推定を目的として、安城土壌に13Cグルコースを添加し、畑状態で1ヶ月間放置することにより、土壌有機物の一部を13Cで標識した。対照として同量の12Cグルコースを添加した土壌を準備した。これらの土壌を用いて、1)12Cグルコースを添加した土壌区、2)13Cグルコースを添加した土壌区、3)12Cグルコースを添加した土壌に通常の稲ワラを添加した区、4)12Cグルコースを添加した土壌に13Cでラベルした稲ワラを添加した区、5)13Cグルコースを添加した土壌に13Cでラベルした稲ワラを添加した区、の計5区を設け、水稲を移植後収穫期までメタン発生速度を測定するとともに、発生メタン中の13Cメタンの割合を求めた。すなわち、区1)と区2)から、化学肥料区における土壌有機物由来のメタンの寄与率を求め、残りを水稲由来(光合成由来)メタンの寄与率とした。また、区3)と区4)から稲ワラ施用区における稲ワラ由来メタンの寄与率を、区4)と区5)から稲ワラ施用区における土壌有機物由来のメタンの寄与率を求め、残りを水稲由来(光合成由来)メタンの寄与率とした。

土壌有機物由来のメタンは、稲ワラ施用区、化学肥料区とも作付け期間を通して常時約20%の寄与率を示した(図10)。稲ワラの寄与は、メタン発生初期には80%近い高い割合を示したが、生育中期に約20にまで低下し、その後徐々に減少した。また、水稲の光合成に由来するメタンは、化学肥料区では常時約80と高く、稲ワラ施用区でも生育中期以降60%以上の寄与率を示した。なお、水稲の光合成に由来するメタンのうち、生育初期には根分泌物に由来するメタンの寄与率が高く、生育後期には根枯死体に由来するメタンの寄与率が高くなることが判明した。

  1. Watanabe, A., Takeda, T. and Kimura, M. : Evaluation of carbon origins of CH4 emitted from rice paddies. J. Geophys. Res., 104(D19), 23623-23630 (1999)

水田から発生するメタンの起源、メタンの土壌中での動態にもどる

1-1. 土壌有機物の寄与率

1-2. 根分泌物の寄与率

1-3. 施用有機物(稲ワラ)の寄与率

1-4. 発生したメタンへの稲ワラ各成分の寄与率の推定

1-5. 土壌有機物、根分泌物、施用有機物(稲ワラ)の各寄与率