土壌有機物の寄与率
日本各地の水田における土壌有機物に由来するメタンの生成量を、各県に分布する土壌統面積、代表地点土壌の作土の深さと土壌の化学的性質さらに稲作期間とその間の気温より推定した(図1参照)。その方法は、窒素の無機化量を土壌の化学性と稲作期間の気温から求め(表2式1,2)、10.8倍することにより炭素全無機化量を推定した(表2式3)。次いで、炭素無機化量のうち二酸化炭素とメタンへの分配割合を土壌の酸化容量と還元容量の比から求めた(表2式4)。推定には、地力保全基本調査から得られた全国の水田3343地点の土壌分析結果を使用した。 その結果、わが国の水田において土壌有機物から生成されるメタンの総量は年間約9.6万トン炭素と見積られ、灰色低地土壌統群から全生成量の41%、グライ土壌統群から20%が生成すると推定された。 1m2当たりのメタン生成量は各種土壌統群で1.8-7.5g炭素(図2参照)、北海道を除く全国7地方で2.4-5.4g炭素(図3参照)となり、これまで世界各地で実測されたメタン発生量の数分の1以下に相当した(表3)。 従って、本推定で考慮しなかった施用有機物や水稲根からの有機物が水田におけるメタン生成に重要な役割を果たしているものと推察した(表3)。
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