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                                   Laboratory of Animal Genetics and Breeding
マウスの雑種強勢に関わるQTL・QTG研究

 家畜の経済形質のほとんどは、品種間交雑による雑種強勢(heterosis)を利用して生産されている。例えば、豚肉は、ランドレース、大ヨークシャーとデュロックの三元交雑種することにより生産されている。 鶏肉は、白色コーニッシュと白色プリマスロック間のF1雑種である。 雑種強勢は、チャールズ・ダーウィンの「種の起源」の中で記載しているように、150年以上も前から知られている遺伝現象であり、家畜の育種改良において必須の遺伝現象である。 しかし、雑種強勢に関わる責任遺伝子は未だに同定されていない。
 雑種強勢の生じるメカニズムとして、今までに、以下に示す二つの主な仮説が提唱されている。 しかし、両仮説は、ともに、家畜や穀物の経済形質に関するゲノムワイドQTL解析結果によって支持されているので、未だにどちらの仮説が正しいのか決着がついていない。
ゲノムワイド優性説:異なる染色体上に存在する複数の遺伝子座の優性遺伝子がヘテロ型として集合することにより雑種強勢が生じる。
超優性説:単一遺伝子座の一つの超優性遺伝子により雑種強勢が生じる。

 我々は、フィリピン産野生マウスを用いたQTL解析の過程で、体重に関わり雑種強勢を示す超優性QTL (Pbwg1.10と命名)を発見した(Ishikawa, 2009 J. Hered., 100:501)(図5)。 現在、雑種強勢に関わるQTGの候補遺伝子を探索するために、サブコンジェニックマウスを用いて雑種強勢QTLのゲノム領域を狭めている。 今後、雑種強勢に関わるQTGを同定し、その成因を遺伝学的に解明したい。 もし、超優性を示す雑種強勢遺伝子が同定できれば、世界初の快挙となるとともに、上述の超優性説を支持することになる。 また、たった1世代で、畜産物の生産性の高いF1雑種の家畜を作出することができるようになり、新しい有用家畜品種の雑種強勢育種の基盤確立に貢献できる。

さらに、名古屋大学の研究シーズ集uniteの以下のwebサイトを参照のこと:
「マウスと家畜・家禽における量的形質遺伝子の解析」
http://www.aip.nagoya-u.ac.jp/unite/jp/detail/0000281.html