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                                   Laboratory of Animal Genetics and Breeding
アジアの在来ヒツジの系統と分化に関する研究

 ヒツジは野生種のアジアムフロンあるいはヨーロッパムフロンから家畜化されたと考えられています(図1)。ヒツジの家畜化は西アジアの肥沃な三日月地帯で始まり、東西へ伝播拡散して大きくアジア産とヨーロッパ産の2大系統に分離したとされます。

 アジア産品種はこれまでの形態学的検索や生化学的多型の解析から、ヒマラヤ山脈をはさんで北方系と南方系に分化していることが示されました。 さらにアジア産とヨーロッパ産の品種集団間にどのような系統遺伝学的な関係が成立しているかを究明する目的で、アジア産の地方品種および日本のヨーロッパ品種を対象に血液タンパク・非タンパク型非タンパク型の電気泳動法による判別型から遺伝子頻度データを基に系統分析を行なった結果、ヨーロッパ品種も含めて大きく2つのグループに分類できることが判明してきました(図2)。

 最近はこれまでに採取したしサンプルを利用して、ヒツジの利用目的に重要な毛や乳に関連する機能遺伝子および疾病に関連する遺伝子についてDNAの多型解析を進めています。
 その一例として、スクレイピーと呼ばれる牛の狂牛病と同じ病気の要因であるプリオンタンパク質についてその遺伝子の多型性を調査した結果、遺伝子型によってスクレイピーに対する感受性が異なってきますが、ヨーロッパでは抵抗性のタイプ(青)が多いのに対して私たちが調査したアジアでは感受性(赤)の遺伝子型頻度が非常に高い傾向にありました(図3)。

 その他いくつかの機能遺伝子の遺伝子型と経済形質の特性との関連を分析し、今後のヒツジ資源の保全と有効活用に役立てることを目指して調査研究を進めています。