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東海国立大学機構
名古屋大学大学院
生命農学研究科

>身近なトリと作る持続可能な社会

研究概要SERVICE&PRODUCTS

 太古の時代、ニワトリは夜の終わりを告げ、吉凶を占う神聖な生物でした。時代は下り、現在は私たちの生活を主に食の面から支えてくれる身近な生き物に変わりました。ですが、ニワトリの役割は意外なところにもあります。例えば、インフルエンザワクチンは卵に作らせています。また、最近では、トランスジェニックニワトリの卵に医薬品を作らせることも実用化されています。

 研究での役割も大切です。卵を温めるだけで受精卵が発生していく過程は、例えば体の形成メカニズムを研究する上での便利なモデルとして使われてきました。一つ一つ異なった条件を施した卵で、経過観察が簡単にできることは大きなメリットです。そして、ニワトリは同時に家畜でもあります。テーマ設定によっては、私たちの食を支える新種を作り出すことも夢ではありません。


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1. 効率的な遺伝子改変・ゲノム編集鳥類作製技術の開発

 マウスを使った哺乳類のサイエンスが爆発的に進んだのは自由に遺伝子を改変したり壊したりすることができたからです。鳥類の研究を進めるために、鳥類を対象とした遺伝子改変・ゲノム編集技術の効率化と利用を目指しています。これまでに、グリーンチキン(蛍光タンパク質GFPを全身で発現するニワトリ)や、医薬品になるホルモンを卵の中に生産するニワトリを作製しています。トリインフルエンザにかからないニワトリの作製や、ウイルスベクター法の改善を進めています。
 [ゲノム編集/トランスジェニック鳥類/インフルエンザ/ウイルスベクター]


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2. 鳥類始原生殖細胞の解析

 時間とともに老化して劣化するばかりの私たちの体の中で、唯一生殖細胞だけがその流れに抵抗できるように見えます。私たちは、胚時期の生殖細胞である始原生殖細胞(将来精子・卵子に分化する予定の幹細胞)に着目しています。ニワトリの始原生殖細胞は例外的に長期の純粋培養が可能で、品種の凍結保存や遺伝子改変などに利用可能です。同じキジ科のウズラでは培養できないのに、何故ニワトリでは可能なのか、その増殖と分化のメカニズムを研究しています。将来は絶滅危惧種の始原生殖細胞を永久保存するような技術への展開を目指します。
 [始原生殖細胞/遺伝資源の保全/幹細胞]



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3. 鳥類卵を利用した有用タンパク質やワクチンの生産システムの開発

 ゲノム配列が決まって、生物の設計図は全て明らかになりました。ですが、全てが染色体上に設計図を持っているわけではありません。糖鎖(糖の鎖)は、酵素が順番に働くことで作られますが、その鎖状構造はゲノムにコードされているわけではありません。ホルモンや抗体などの活性を決めるのも、ワクチンの増殖を左右するのも糖鎖の構造が関係しています。この糖鎖を制御することで、ニワトリを使った物質生産がさらにパワーアップすることが期待されています。
 [糖鎖/医薬品タンパク質/インフルエンザ/ワクチン/鶏卵バイオリアクター]



4. 鳥類の有用形質の解析と利用

 絶滅した恐竜の末裔がトリとして現在に命をつなげていることは知っていますか。大絶滅を生き残り、他にライバルのいなかった空を占有しているトリは、きっと哺乳類とは違った繁栄戦略を持っているに違いありません。例えばトリは一般に血糖値が高いのですが、私たちはその中でも特に血糖値が高い系統を見出しています。こんなに血糖値が高くても糖尿病にならない。その仕組みを解明できれば、私たちの現代生活をよりよくするヒントが得られるかもしれません。
 [ニワトリ・ウズラリソース/疾患モデル]


 研究室では、酵素、大腸菌、ウイルス、細胞、個体(ニワトリやウズラ)を全て扱います。技術的には、遺伝子工学、動物細胞培養、分子生物学などの手法を組み合わせて研究を進めていきます。実験動物としては大型の部類に入るニワトリを遺伝子操作を行って多数飼育しているという点が大きな特徴になっています。


バナースペース

鳥類バイオサイエンス研究室

〒464-8601
愛知県名古屋市千種区不老町

TEL 052-789-4114
FAX 052-789-4114