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研究材料の紹介:シロイヌナズナ

 種子植物を大きく分けると裸子植物と被子植物に分類されます。被子植物を大きく分けると単子葉類と双子葉類に分類されます。双子葉類をさらに大きく分けるとバラとキクの仲間に分けることができますが、ここで紹介するシロイヌナズナはバラ類アブラナ科の一年草です。シロイヌナズナは小さいので、シャーレの中で種子を芽生えさせてそのまま蛍光灯やLEDなどの人工光の下で成長させ続けることが可能です。シロイヌナズナは日照時間が長くなると花成が誘導される長日植物であることが知られており、自然界では4月から6月にかけて花が咲きます。実験室の中でも、日長をコントロールすることにより栄養成長期を長くしたり、花成を誘導したりすることができます。コンパクトな植物ですが、そこには秩序ある発生プログラムが備わっていることや、花成に限らず環境に応答して生理的にも形態的にも多様な応答系が存在することを観察することができます。私たちは「生命を完全では無いが非常に精巧な機械仕掛けの装置」としてとらえ、そこに潜む巧妙な仕組みを解き明かしたいと考えています。植物には植物に特有の光情報伝達系、ホルモン情報伝達系、概日時計システム、エネルギー代謝系が存在し、環境に適応した成長を支えています。これらの機能はゲノムの中に存在する遺伝子のはたらきによって支えられています。シロイヌナズナは植物の中で最初に全ゲノム配列が解読されました。今日ではゲノム情報に基づいて、遺伝子の機能を解析することが可能です。このような理由で、当研究室ではシロイヌナズナを高等植物のモデル生物として研究対象にしています。

Arabidopsis thaliana Columbia

 全ゲノムが解読されたシロイヌナズナの野生系統のひとつです。実験室の中ではシャーレの寒天培地上で無菌的に生育させることができます。生育条件や遺伝子の機能を修飾することにより、多様な生理的、形態的変化を観察することができます。ゲノムサイズが小さい、世代時間が短い、自家受粉により多数の種子を取得可能、形質転換が容易であるなどの特徴を備えています。