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学生へのメッセージMessage

ゲノム情報機能学研究室を志望するみなさんへ

当研究室を志望する学生には以下の5箇条を満たすように努力することを求めます。

1 おもしろい研究をしたい、研究のおもしろさを知りたいという強い知的好奇心と向上心をもつこと。

2 そのために新しいことを学ぶ努力を惜しまないこと。

3 自分の研究を責任もって遂行すること。

4 研究を遂行することを第一に自らの生活を律すること。

5 研究室のさまざまな活動に積極的に関わること。

以下各項目について少し説明しておきます。

1. 当研究室を志望する学生には、おもしろい研究を自分でしてみたいという、知的好奇心と向上心に裏付けられた強い動機をもっていることを求めます。

おもしろい研究ってそもそも何?と疑問に思うかもしれません。ある研究がおもしろいかどうか判断するには、その研究の背景を知る必要があります。例えば、こういう結果になると想定して実験を行ってみると予想に反してこういう結果になった。予想外の結果によってこれまでの考え方が覆され新しい考え方が現れてきます。おもしろい研究は必ずこのような側面を含んでいます。つまり、研究のおもしろさを実感するには、これまでの考え(つまり研究の背景)を学ぶ必要があるのです。そのために、まずは強い知的好奇心と向上心をもつことがその前提になります。

2. 当研究室を志望する学生には、学ぶ努力を積み重ねる志をもつことを求めます。

第1条を達成するために必要な項目です。例えば、当研究室では、研究室セミナーで最新の原著論文の内容を説明するジャーナル紹介を行っています。この担当の学生には、紹介する論文を丁寧に読み解いて、その研究背景、新しい実験技術、新しい発見、その意義と展望を説明してもらいます。そのためにはさまざまな新しいことを学ぶ必要があります。このような努力の積み重ねが、あなたをおもしろい研究に導きます。

3. 当研究室を志望する学生には、責任もって自らの研究を遂行することを求めます。

研究室に配属されると、各自一つの研究テーマを担当してもらいます。そのテーマに沿って、実験を行って結果を得て、それを受けまた新しい実験を行って新たな結果を得ます。その繰り返しによって研究は少しずつ前進していきます。逆に、自分が実験を実行しなければその研究テーマは1ミリも進展しません。そのテーマはあなたに与えられた「仕事」です。このことを深く自覚して責任もって自分の研究を進めてください。

4. 当研究室を志望する学生には、研究・実験を中心に自らの生活を律することを求めます。

研究を進めていくには日々こつこつと実験を積み上げる必要があります。一連の実験を、集中力を切らさず正確に実施するためには、本人の日々の生活の管理が重要です。実験とその準備、結果の考察を着実に進めるためには、体力と気力の調整・維持が必要です。今日は深夜までがんばったけれど、翌日はその疲れで昼過ぎにしかラボに出てこられなかった、というようなムラのあるスタイルでは決して長続きしません。毎日定時に実験を開始し、集中して実施し、早めに終了し、翌日の準備やノートまとめの時間を確保し、定時に帰宅するというようなコンスタントな生活を強く推奨します。

5. 当研究室を志望する学生には、さまざまな研究室の活動に積極的に参加することを求めます。

研究室では、研究以外にも研究室の掃除、飲み会、他の研究室との交流活動などいろいろな活動をしています。研究以外のことに自分は関わらないということは通用しません。

(藤田祐一 2018年12月21日)

配属前の学部生の皆さんへ2:

皆さんは、実際の研究室ってどんなところだろう、自分でもやっていけるだろうかという不安と、最先端の研究現場に立つことができる期待との入り交じった気持ちで配属先の研究室をいろいろと思い描いていると思います。皆さん(名大農学部応用生命科学科)がこれまで実験と直接関わる機会は、1年生での化学実験や生物学実験、3年生での学生実験だったと思います。これらの実験では、すべての準備がすっかりお膳立てされていて、実験テキストに基づいて定められた操作を進めていくと一定の結果に至り、これをレポートとして報告するという流れでした。さまざまな要因で予期しない結果になってしまったことも多かったかもしれませんが、学生実験では得られる結果があらかじめ明確に決まっています。これに対して、研究室配属後に皆さんが取り組む実験は、結果はどうなるか分かりません。これが学生実験との最も大きな違いです。まだ分かっていないことを実験で調べようとするのですから、当たり前と言えば当たり前です。それだけではありません。実験の準備もよく考えて自分で整える必要がありますし、実験機器の使い方も誰かに聞かないとわかりません。自分でやった実験の結果なのに最初は自分ではどう解釈したらよいのかわからないこともあります。なんかたいへんそうですね。

でも心配いりません。配属間もない4年生の学生を「きみがんばって最先端の研究をしてみなさい」と突き放すことなどあり得ません。皆さんには、研究室でこれまで行われてきた研究からこれをもう少し進めるとおもしろそうな結果が出そう、という研究テーマを提示して、その背景と実験を行う意義について詳しく説明します。そして、教員が具体的な指示をして研究室の先輩に実験機器の使い方や操作などを教えてもらいながら実験を進めます。結果が得られると、生データを見ながら教員と話し合って、次にするべき実験について考えます。配属当初は、こんなふうにまさに“手取り足取り”で研究を進めます。この一連の流れを何度か繰り返す中で、どんなふうに実験を行って、どんなふうに解釈していくのかということがだんだんと腑に落ちてきます。そうなると、自分のアイディアを取り入れつつ実験を進めていくことができるようになります。与えられた研究テーマがだんだんと自分の“仕事”になっていくのです。そして、重要なことは、その研究をどれだけ発展させられるかは、まさに皆さんの研究に対する情熱にかかっているということです。

私たち教員は、実験の結果だけでなく、そんなふうに皆さんが研究を通して成長していく姿を見るのがとても楽しみなのです。

(藤田祐一 2018年1月7日)

配属前の学部生の皆さんへ:

4年生で研究室に配属されて自分の卒業研究を始めると、これまでとはまったく違った世界が広がっていることに気がつくことでしょう。3年生までは、すでに確立された学問体系を理解することに一生懸命だったはずです。たとえると、すでに明らかにされてきた研究成果によって築かれた堅牢な学問の城があり、その全体像の把握から始まり、城の中の無数にある廊下や部屋の場所、その部屋に置かれている調度品や美術品等々をともかく覚える、そんなことをずっとやってきたと思います。ところが、研究の現場はどうなっているでしょう。それは、これまでずっと覚えてきた城の中に入り込んで、教科書や文献という詳細な地図をもとに、どこかに隠されているらしい財宝を探し始める、という感じかもしれません。ところが、実際に始めて見ると、廊下や通路が見落とされていたり、思いもよらないところに隠し部屋があったり、正確だと思っていた地図自体が実はまったく完全ではないことがわかります。そもそも財宝がどこにあるのか、それすらはっきりしていません。もしかするとその財宝につながる廊下自体が、まだ見つかっていないのかもしれません。指導教員が、地図を指しながらこっちの方に何かありそうとアドバイスしてくれるのですが、それも教員が見てきたわけでもないのでほんとに見つかるかどうかもわかりません。そんな感じでしょうか。もしかすると、ちょっと心配になってきたかもしれませんね。

私は、4年生になりたてのとき、自分の卒業研究を、3年生の学生実験の延長のように考えていたような気がします。最初は、学生実験のテキストに従っていたように、先生の指示に従って実験をしていました。最初はそれも大事だったかもしれないのですが、何となく楽しくありません。そんなあるとき、先生に言われました。「君が考えて手を動かさないと何も進まないよ」と。その言葉を聞いて「あ、そうか。自分で考えていいんだ!」それまで見ていた世界が変わった瞬間でした。自分で考えて、こうではないか、こうすればうまくいくかも、思いつくことを、自分自身が実験を行ってその考えを検証することができる。実験が他人ごとではなくなりました。

植えた菌や植物がしっかり生えてきた、プラスミドができた、タンパク質が大量発現した、精製できた、活性がはかれた、形質転換体ができた、変異体と野生型の違うところを見つけた・・・実験は小さな喜びにあふれています。その積み重ねが、あなたをいつしかこれまでだれも知らなかった新しい部屋に導きます。先生もびっくりしてくれます。その部屋に財宝があったかどうかはどうでもよくなります。気がつくと、研究に夢中になっている自分がいるかもしれません。

(藤田祐一 2016.12.1)