研究紹介 ・ 土岐和多瑠

今日、地球上の至る所で多種多様な生態系が形成されています。生物種間の相互作用は、この豊かな生物多様性をもたらす重要な要素の一つであり、中でも、ほぼ全ての動植物は何らかの形で微生物と関係しています。

私は、特に高い多様性を示す昆虫類に興味を持ち、森林において、「甲虫と微生物との共生関係」と「共生関係に大きく関与すると考えられる特異な形態進化(=左右非対称性)」を中心に、生物の生態や系統進化、種分化に関する以下のような研究を行っています。

1.非社会性昆虫と菌の栽培共生
竹の中で酵母を育てて食べるニホンホホビロコメツキモドキという昆虫を材料に、共生の実態解明とその起源に迫ります。

2.メスに見られる顕著に左右非対称な外部形態の適応的意義
ニホンホホビロコメツキモドキのメス成虫は左頭部が著しく発達し、異形を呈します。それに何の意味があるのか調べています。

3.ヒゲナガカミキリ族カミキリの食性進化、昆虫嗜好性線虫との共種分化
松材線虫病(松枯れ)の病原生物であるマツノザイセンチュウとその近縁種は、ヒゲナガカミキリ族カミキリを運搬者として利用します。松材線虫病の防除にはカミキリと線虫の歴史的な依存関係の理解が必要ですが、カミキリ−線虫の共種分化プロセスについて知見がほとんどありません。 私は、分子系統樹を用いてその共種分化プロセスを明らかにしたいと考えています。

私の研究は、昆虫の生活史を詳細に明らかにすることをベースとし、野外調査、室内飼育実験、遺伝子解析等を駆使し、仮説の検証、実証を行うスタイルです。生き物を注意深く観察して仮説を発見し、いかにして実証へつなげるか、知恵を絞ります。

 


研究業績