森林を構成する生物の個体群、群集に関する生態学的研究

姜自如

Ambrosia beetles are one of the most destructive pests in the global natural forest ecosystems, not only can they fully use ecological space provided by their host-trees, but they can take advantage of potential resources of host-trees by interaction with various factors in the forest ecosystem, This ability depends mainly on two aspects: its own unique structure and the associated relationship between ambrosia beetles and their associated fungi. My studies are mainly focus on the ecological impact of ambrosia beetle and its associated fungi in Japan.



伊部智善

 キクイムシのうち、養菌性キクイムシと呼ばれるグループは樹木に坑道を作り、そこに共生菌を植え付けて食物とします。しかし、養菌窃盗性キクイムシと呼ばれるグループは共生菌を持たず、養菌性キクイムシの坑道の近くに穿孔することで食物となる菌を得ます。養菌窃盗性キクイムシは日本では西表島で発見されており、未だ不明な点の多い生態を明らかにすべく調査を行っています。



南美月

 一部のシジュウカラ科鳥類はキツツキ類の古巣や樹洞、人工の巣箱に、コケや樹皮、獣毛などを組み合わせて巣を作ります。似たような巣材を使っていても、た とえば獣毛の分量が異なったり、違う種類のコケを使っていたり、巣の厚さが異なったりします。このような違いは何の影響を受けているのでしょうか?
本研究では、種間、個体間、地域間での巣材の選好性の比較や、各巣材の特性など、巣の特徴について調べています。





鶴岡建汰

 現在、宅地や農地の開発により森林の断片化が進行しており、孤立した樹木が増えています。孤立した樹木は周囲から独立しているように見えますが、林内の樹木とは異なる生息環境を提供し森林全体で見ると多様な環境が作り出されているとも言えます。この研究ではブナ科樹木の堅果を利用する種子食昆虫を題材として孤立した樹木が種子食昆虫の多様性にどのような影響を与えているかを解明します。





中野文尊

 昆虫は種の多様性が著しく高く、あらゆる面で生態系に貢献しています。中でも甲虫類は種数・個体数ともに非常に多く、生息環境が多様であるため森林環境を評価する指標として有用であると考えられます。亜熱帯気候に属し、固有種が多く種の多様性が高い沖縄県西表島は近年自然保護が厳しくなっていますが、人の手が加わりやすい居住地や農地付近において、人為的な攪乱が甲虫の多様性や群集構造にどのような影響を与えるかを解明したいと考えています。





小田周

 森林を流れる河川にはカワゲラやトビケラ、ガガンボといった「水生昆虫」が生息しております。彼らは水域の落葉などを分解し、また他の水生生物や陸上動物の餌となって森林生態系に関与しています。一方で現在、日本の森林の約4割は人工林であり、同じ樹種の針葉樹が広がっている光景も多く見られます。このような自然状態でない森林が、水生昆虫の多様性に及ぼす影響を調査し、陸上と水中、それぞれに存在する生態系の関連を研究しております。





卒業生 −繁殖期におけるカラ類の餌資源利用様式−

 ふ化したヤマガラのヒナと昆虫を運んできたシジュウカラ。繁殖のシーズンになると、鳥は巣をつくり、卵を産みます。 卵からヒナがふ化すると、親鳥は餌となる昆虫を探してきてヒナに与えます。 このとき親鳥はどのような種類の昆虫をどれだけヒナに与えるでしょうか。
 繁殖開始からヒナが巣立つまでの過程を明らかにするために、 巣箱とビデオカメラを設置して鳥の給餌・繁殖生態を調べています。


卒業生 −針葉樹人工林におけるカラ類の繁殖・給餌行動−

 日本の森林面積の約4割は針葉樹人工林が占め、生物多様性の低いことが指摘されてい ます。一般に、多くの森林性の鳥類にとって針葉樹人工林は餌となる節足動物、果実などが 少ないことが知られています。そこで、針葉樹林内に小面積ではあるものの餌資源が多いと 考えられる広葉樹林(広葉樹パッチ)に着目しました。
 繁殖期において親鳥は、針葉樹人工林を採餌場所として利用するのか?それとも広葉樹パッチを選択的に利用するのか?どのような種類の節足動物を餌とし、どれだけの量の餌を、どのようなコストで得るのか?親鳥の採餌・給餌行動を中心に、針葉樹人工林におけるカラ類の繁殖生態を研究しています。


卒業生

 国内では現在、カシノナガキクイムシによるナラ枯れという樹病が発生しています。ナラ枯れはブナ科の樹木を多く枯死させましたが、その枯死木からはキノコ等の菌類が発生します。 そして一部の菌食性昆虫がナラ枯れ木に発生する菌類を利用しています。 私はナラ枯れ木上で優占しているハカワラタケというキノコと、それを利用しているタイショウオオキノコという甲虫とキノコヒモミノガという蛾の間の資源競争の有無について調査を行っております。



卒業生

 樹木に穿孔してその中で生活を営んでいるキクイムシという昆虫を研究しています。 キクイムシは成虫も幼虫も樹木の中で生活するため、穿孔部位の環境が幼虫の発育に大きく影響します。時間が経つにつれて、環境は変化し他個体の穿孔も増えるため、キクイムシにとって最適な穿孔部位は変化していくと考えられます。
 そこで本研究では、キクイムシの穿入孔が倒木にどのように分布していくかを明らかにすることを目的とし、その時空間分布の調査を行っています。



卒業生 −カラ類における親から雛への餌資源配分−

 ヤマガラやシジュウカラは一度に5~10個程度の卵を産み、雛が孵ると昆虫などを給餌して育てます。本研究では、複数の雛に対して親鳥がどのように餌を配分するのか、また各雛はどのように親から餌を獲得するのかということを明らかにするために、巣箱の中に小型赤外線カメラを設置して親と雛の行動を調べています。



卒業生

 イチジク株枯れ病の媒介者として、全国のイチジク農家に大打撃を与えているア イノキクイムシ。しかし彼らがどこでどのように暮らしているか、なぜ 最近に なって大量発生しているのか、実はよくわかっていません。生活史の大半を樹木 内で過ごすため、観察が難しいのがそのひとつの理由です。 そこで考案されたのが、ガラス管の中に木屑などを詰めてその中にキクイムシを 穿孔させる人工飼育法です。この人工飼育法を用いて、アイノキクイム シの生 態を、特に社会性行動に着目して調べています。



卒業生

 近年、森林性昆虫のカシノナガキクイムシによるナラ枯れの被害が全国的に発生しています。通常は、被害木が発生した場合、これを速やかに伐倒し、内部にいるカシナガを殺虫するために処理を施します。  本研究では、この被害木を資源として利用できないか調べるため、キノコ栽培にナラ枯れ木を使用する試みを実施しています。通常の栽培と比較して、ナラ枯れ木を利用した方法は実用に堪えうるのか。実験を行い検討する予定です。