研究詳細

重力屈性の分子メカニズム

生き物の多くは、重力方向を感知する能力を持っています。例えば私達は目隠しをされても、どちらが上か下か簡単に分ります。植物もまた重力を感知し、茎は上を、根は下を向いて伸びます。私達はこの重力屈性に異常を示す変異体を多数単離し、原因遺伝子の機能解析を通して重力屈性の分子機構を明らかにしたいと考えています。次世代シーケンサーを利用することで原因遺伝子の特定を速やかに行うことが可能になり、研究のスピードアップが期待されます。また最近、変異体を用いたDNAマイクロアレイ解析から新たな重力屈性関連遺伝子を単離することに成功し、解析を進めています。

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図1 シロイヌナズナの花茎の組織構造と重力感受細胞
内皮細胞は重力方向に沈降するアミロプラストを含み重力感受細胞として働く。
図2 花茎の重力屈性反応
水平に倒して30分後から10分毎の写真を重ねてある。

重力の感受メカニズム

植物は重力方向の変化をどのようにして感受するのでしょうか?これまでの研究から、内皮細胞が茎の重力感受部位であること、アミロプラストの重力方向への移動が重力感受に重要であること、そして内皮細胞内の液胞やアクチン繊維が茎の重力感受に関わることを明らかにしました。私達は、感受細胞の重力刺激前後の様子を生きたままリアルタイムで観察する実験系として、垂直ステージ共焦点顕微鏡や遠心顕微鏡などを独自に立ち上げ、重力の感受メカニズムに迫ろうとしています。

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図3 垂直ステージ共焦点顕微鏡を用いた内皮細胞の観察
重力方向を保持して撮影した内皮細胞の3次元像。緑はGFP融合蛋白質、赤はアミロプラストの自家蛍光。 PIN3:オーキシン排出キャリア、mTalin: アクチン繊維結合蛋白質、γ-TIP: 液胞膜蛋白質

重力感受を可能にする液胞膜の動的性質

内皮細胞はその体積のほとんどを液胞によって占められ、アミロプラストは周囲を液胞膜に取り囲まれています。私達は変異体の解析を通して、液胞膜が様々に形を変えながら動くという動的性質がアミロプラストの重力方向への移動に重要であることを明らかにしました。液胞は植物個体のあらゆる細胞に存在し多様な役割を担っています。今後、変異体の原因遺伝子の機能を探ることにより、内皮細胞に限らず様々な細胞における液胞膜の動的性質の制御機構、さらには植物が示す重力屈性以外の高次機能において液胞膜動態が果たす未知の役割に迫りたいと考えています。

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図4 内皮細胞の液胞膜の動的性質とアミロプラスト
共焦点顕微鏡画像の連続写真。A: 野生型、B:zig-1変異体。 野生型では発達した中央液胞が、細胞体積のほとんどを占める。液胞膜の深い貫入(原形質糸)が見られ、アミロプラストの周囲は液胞膜で囲まれたまま、移動している。zig-1変異体では、中央液胞は形成されるが液胞膜の貫入は観察されず、液胞膜がアミロプラストを囲むことは無い。また、アミロプラストもほとんど移動しない。緑:液胞膜、赤:アミロプラストの自家蛍光。
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