1.チャネルタンパク質に関する研究
2.NELLタンパク質(NELL1, NELL2)に関する研究
WHO(世界保健機関)によると、心疾患は多くの先進国でガンに次ぐ2番目の死因となっています。このような心疾患を惹起する分子メカニズムの解明は、心疾患患者への新たな治療法の開発には欠かせないものです。現在、我々は以下の2つのプロジェクトに焦点を当てて研究を行っています。
1)心筋細胞内における足場タンパク質の機能とシグナル伝達経路の解明
足場タンパク質は、複数のタンパク質が複合体を形成する際に足場となるタンパク質であり、細胞内のシグナル伝達の局在化や制御を担っています。このため生理的な機能の維持や組織の発生・成熟に重要であると報告されています。我々は、PDZ-LIMタンパク質と呼ばれる足場タンパク質に焦点を当てており、その中でも特にENHタンパク質に関する研究を行っています。ENHは、選択的スプライシングにより大まかに分類して2種類のアイソフォームを持ち、それぞれが心機能に関して相反する作用を有しています。我々は、心疾患に関するそれぞれのアイソフォームの分子機能とスプライシング機構の解明を目指しています。
2) イオンチャネルを制御する調節タンパク質や調節因子の解明
イオンチャネルは、心臓が規則正しく協調して収縮する際の重要な役割を果たしています。我々は、心疾患におけるイオンチャネルの変化、特に電位開口型カルシウムチャネルの発現を制御するメカニズムに関して研究を行っています。心疾患において、電位開口型カルシウムチャネルの再発現、活性化が報告されています。現在は、このカルシウムチャネルの再発現や活性化を抑制できる因子の解明を目指しています。
2.NELLタンパク質(NELL1)に関する研究
私たちの研究室では、骨の形成を促進する作用をもつNELL1というタンパク質の研究を行っています。ラットの骨欠損部位にNELL1を作用させると骨形成が促進されることが報告されており、現在、ヒトの再生医療分野への応用が期待されています。骨をつくる骨芽細胞は、間葉系幹細胞から分化しますが、この間葉系幹細胞は骨芽細胞以外にも、筋芽細胞、脂肪細胞などに分化することができます。NELL1は脂肪細胞への分化を抑制し、骨芽細胞への分化を誘導します。我々はNELL1が骨形成を促進する詳細なメカニズムを解明することで、骨の再生医療に貢献することを目指して研究を行っています。
参考文献
“Nell-1-induced bone regeneration in calvarial defects.” Aghaloo, T et
al. American Journal Pathology, 169, (2006) 903–915
“A new function of Nell-1 protein in repressing adipogenic differentiation.” James, AW et al. Biochemical Biophysical Research Communication, 411, (2011) 126–131
“The C-terminal region of NELL1 mediates osteoblastic cell adhesion through
integrin α3β1.” Hasebe, A et al. FEBS Letter, 586, (2012) 2500–2506
“Oligomerization-induced Conformational Change in the C-terminal Region
of NELL1 Is Necessary for the Efficient Mediation of Murine MC3T3-E1 Cell
Adhesion and Spreading.” Yoko, N et al. The Journal of Biological Chemistry,
(2014) in press