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名古屋大学 生命農学研究科/農学部 森林水文・砂防学研究分野  Forest Hydrology and Disaster Mitigation Sciences

研究内容の紹介
森林をはじめとする陸域生態系における水・物質循環の解明,および土砂災害などの自然災害と人間社会との関係に関する研究を行っています。野外調査,社会調査,数値モデルなど様々な方法を駆使して取り組みます。


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1.様々な森林における水/エネルギー/炭素循環特性
森林は地球上の陸地を覆うもののなかで,非常に特徴的なものです. 同じ緑の草地・農耕地と比較してもその高さが非常に高く,根も地下深くまで達しています. そして,森林は光合成,降雨中・直後の遮断蒸発も含めた蒸散活動を通して,気温や湿度など大気側の状態 に影響を与えているとともに,大気.土壌からも影響を受けています. この相互作用を正確に理解することは,局地−地域−大陸・全球と言ったスケールで森林の影響を評価 するために必要です.また,「地球温暖化」問題に関して,その正確な予測・評価のためにも いろいろな空間スケール,時間スケールでの森林における水・エネルギー・CO2循環の解析が必要となります.
現在,シベリア・ヤクーツク(国際共同研究)の森林観測を中心に研究をしています.

  • 北方林/温帯林/熱帯林の比較
  • 群落スケールの水・二酸化炭素収支評価
  • 蒸発散・二酸化炭素交換の時空間変動特性と支配要因
  • 蒸発散・二酸化炭素交換とフェノロジーの関係
  • 群落構造と乱流輸送の関係
  • 局地/広域地形と乱流輸送の関係
  • 土壌呼吸と支配要因
  • 樹体貯熱の季節変化
  • 樹液流計測による単木スケールの蒸散量評価
    などなど

    名大祭での研究展示(2015年6月)「北方林はどのようにして育っているのか?」 
    1)東シベリアの森林2)森林の役割

  • 2.流域スケールでの水/土砂/物質循環
    1.の研究領域はできるだけ“理想的な条件”(そんな状態はなかなか望めません)で, 観測を行いその現象を解析しようとする研究です.しかし,実際には河川を流れる水は流域の中のいろいろな部分を とおって川に流れ出てきます.つまり,斜面の土壌のなかで水がどの様に移動しているのか? 流域内での蒸発散量の空間分布はどの様になっているのか?などを理解することが必要になります. また,大雨などで多量の水が斜面に供給されると,土砂移動(表面浸食,崩壊,土石流など)が発生します. 水と土砂移動の相互作用に関しても,植生の影響が重要となってきます.

    3.土砂災害に備える地区防災計画研究(名古屋大学減災連携研究センターへのリンク
    これまでに行ってきた研究
    ○ナミビア季節性湿地帯への稲作導入による水収支への影響評価
    土地利用の改変は、熱収支、水収支に対して影響を与え、その地域の生態系に悪影響を与える可能性がある。南西アフリカに位置するナミビアにおいても、今まで未利用であった湿地帯に稲作を導入することで、国内の食糧安全保障に貢献しようとする研究がなされてきている。しかしながら、現地の湿地帯の水収支はいまだ明らかではなく、湿地帯の水田化が当地の水収支に対してどのような影響を与えるのか未知である。そこで、ナミビアの季節性湿地帯における稲作導入による当地の水収支への影響について評価することを目的とし、研究を進めている。
    SATREPSプロジェクト「半乾燥地の水環境保全を目指した洪水−干ばつ対応農法の提案」へのリンク
    ○都市域の「緑」の果たす役割
    森林を含む緑地は,山のものだけではありません.近年,都市内での緑地が都市環境の緩和に対して,大きな影響を与えているで あろう事が期待されています.しかし,都市化が森林の水/エネルギー/炭素循環に与える影響, 都市緑地における水/エネルギーの循環過程はほとんど知られていないのが現状です.そのために, 都市の影響による森林地での森林の水/エネルギー/炭素循環の変動や都市内緑地での水/エネルギー循環の 実態を観測・解析しています.
    ○亜高山帯での水循環
    「水資源」を考えると,日本の多くの河川は上流での水に依存しています.と言うことは,標高の高いところも重要 かもしれません.また,標高の高いところでは暑くなっても,雪がいっぱいあります.このことが,里山では絶対見られない おもしろい現象を引き起こしている(かもしれない?)
    高山から乗鞍岳頂上直下までの約40km,標高差2000mにわたる測定ラインを設け,連続気象観測を行うとともに, ゾンデによる高度5000mまでの大気状態,水蒸気サンプリングによる安定同位体の観測を短期週通的に行いました.
    これらの解析から,気温の状態による風速分布の変動,高標高地域と低標高地域での気象特性の相違,大気中の気象プロファイルと 地表に沿った接地気層内での気象プロファイルの相違,大規模盆地内での水蒸気移動特性などが解析されました.

    ○樹冠構造の解析
    【シミュレーション編】動物の3次元形態はほぼ遺伝子に因るといわれますが, 植物では様々な環境や他の植物などの影響も要因に加わります.森林の地上部のうち上層の枝や葉が多く分布する層を 林冠(キャノピー)とよびますが,この複雑にみえる林冠構造も放射や乱流拡散などの様々な環境要因や植物生理との 相互作用を受け自己組織化した結果としてその形態を捉える必要があります.また林冠はシュート,大枝,個体エンベロプ, 群落などのサイズの異なる階層性をもち,それぞれが上位レベルの構成要素となっています.このように林冠構造は枝や葉などの 構造構成要素が有機的な構造をもつにも関わらず,従来は測定・記述・解析の簡便性を図るためランダムや一様な配置を前提とした 扱いがなされてきました.そこで本研究室ではコンピュータシミュレーション技術を駆使した林冠構造の解析を行いました.

    【実測編】森林水文学において林冠は日射の減衰,放射収支,降雨遮断,蒸発散,乱流境界層などの主要なプロセスの生起する場であり, 林冠の構造や特性の影響は大きいと考えられます.しかしビルディングや人体のような閉曲面を対象とした測定とは異なり, 空隙が多く様々なサイズ構造と多層構造をもつ林冠の3次元測定は容易ではありませんでした.測定結果を森林と環境との解析に 応用するためには枝と葉を区別して測定する必要もあります.本研究室ではこのような林冠構造の測定法としてレーザ光切断法の 可能性に着目し開発を進めてきました.その結果として,枝と葉を区別できる林冠3次元測定法,数百米オーダーの規模で林冠構造を 詳細に測定する方法などが完成し、様々な森林の林冠構造データを蓄積中です.蒸発散研究との連結や森林現存量評価への利用や 森林景観評価への応用なども進めています.オーストラリア北部の熱帯雨林における1万平方米の範囲の林冠構造を詳細に測定する 国際共同研究も実施しました.

    ○降水特性の解析
    過去50年にわたる日本全国の降水データを用いて,日本における降水パターンが どの様に変動してきているかを解析しています.また,降水に大きな影響を与えると思われる 海水表面温度(SST)の長期変動特性と合わせて解析することにより,日本の降水パターンと海水の関係を明らかにしました.

    ○生物季節(フェノロジー)の解析
    落葉樹の開葉や落葉,花の開花,ウグイスの初鳴きなど,季節に伴う生物の変化を 生物季節といいます.地球環境の変動(特に温暖化)が注目されていますが,気候の変化が生物季節にどの様な 影響を与えているのか?また,樹木の成長季節がどの様に変動してきているのか?などを, 過去50年にわたる気象データと生物季節データから解析を行っています.その結果,樹木の生長期が明らかに長期化している傾向が見いだされてきました.