中部農業経済学会 第72回研究発表会
日 時:2002年6月22日(土) 場 所:名古屋大学農学部
個別報告
第1会場
タイトル・報告者 座長 1 小規模近郊野菜産地の実態と課題−岐阜県神戸町を対象として−
原 任利(岐阜大学大学院)神田 多喜男
(愛知県農林水産部)2 高冷野菜産地の展開過程と地域複合の可能性−岐阜県高鷲村を対象として
丸山 陽一郎・坂上 桂太(岐阜大学大学院)3 改革開放後の黒竜江省農村における農家経営の意志決定−二つの村を事例として−
林 ミン 東(三重大学大学院)柴垣 裕司
(静岡大学)4 中国における輸出向けネギ生産農家の経営実態−山東省青洲市のK村を事例として−
呉 雪 峰(岐阜大学大学院)5 花き流通トレー規格化に関する研究
井上 守(名古屋大学大学院)石田 正昭
(三重大学)6 JAS法改正下のアサリ流通
常 清 秀(三重大学大学院)
第2会場
タイトル 座長 1 Specification of Average Yield Function
Shintaro Hirako(筑波大学大学院)小栗 克之
(岐阜大学)2 都市近郊酪農における搾乳ロボットの経営改善効果
鬼頭 功(愛知県西三河農林水産事務所農業改良普及課)3 経営成果の違いに見る農業経営者意識と経営行動の特質
石川 嘉奈子(岐阜県西濃地域揖斐農業改良普及センター)荒井 聡
(岐阜大学)4 シクラメン経営における労働実態と雇用コスト削減への提言
武田 千鶴子(岐阜県東濃地域農業改良普及センター)5 Environmental pollution control in Sri Lanka: An analysis of policy and institutional framework
Kularatne S. Jagath and Hiroyuki Takeya(名古屋大学大学院)徳田 博美
(三重大学)6 Inpact of Training on Poultry Production of Family Farms in Cambodia's Kandal
Thun Vathana and Hiroyuki Takeya(名古屋大学大学院)大原 興太郎
(三重大学)
シンポジウム
『食料の生産・消費における安全・安心』
去る2002年6月22日(土)に、上記テーマでシンポジウムを開催し、約90名の参加者によって活発なディスカッションが行われました。
詳細は、2002年9月刊行予定の『農業・食料経済研究』第49巻第1号に掲載されますが、概要をホームページ上に掲載いたします。
座 長 今井 健(岐阜大学農学部)
第1報告
わが国食料消費の変化とその特徴
梶川千賀子(岐阜大学)
報告の前半では、マクロ指標の統計分析を中心に日本の食料消費の構造的な変化と、それに対応する流通・加工・外食産業の相対的なウェイトの増加を分かりやすく説明されました。その中で輸入品の増加にも注目され、後半では、食品流通の国際的な制度的枠組みを構築する事例として、WTOやSPS協定、また対日アクセスへの国内的な対応としてJAS法、食品衛生法などを取り上げて、その変化を説明されました。
しかし、そのような制度があるにもかかわらず、俗にいう狂牛病や遺伝子組み替え等の問題が表面化し、消費者の食生活を守るという企業の社会的な責任にも言及しておられます。ファーストフードに対抗するため、イタリアではじまった"スローフード"運動なども紹介されましたが、我々の食生活を見直す上で非常に興味深いものだと思います。
感想を含めて簡単にまとめますと、経済成長のスピードが速かったわが国の食料消費の変化は、欧州の経験よりもさらに激しいものがあり、企業の利益追及の影響に惑わされないより活発な消費者の行動が求められると思います。
文責:小林富雄(名古屋大学大学院)
第2報告
耕畜連携、酒造メーカーとの提携による安全安心米作り
森川貞秋(アイガモ稲作研究会会長)
近年、食料に対する消費者のニーズは多岐にわたり、とりわけ健康や安心に対する関心は強くなっています。従来の化学肥料を多量に使用する栽培方法は、稲そのものを軟弱化させ、農薬に頼らざるを得ない栽培方法だといえます。
そこで私たち羽島市桑原町大須地区の農家が中心となり、稲そのものの力を信じ、アイガモの力を借りた有機栽培をはじめました。私たち農家の中にもアトピーで困っている方も見えて、これは私たち自身の安全・安心なものへの思いでもあったように思えます。
環境にやさしいシステムづくりとして、大須地区内での地域内循環に取り組みました。家畜糞尿を水田の地力増進に有効利用し、畜産農家の飼料は地元で生産したスーダングラス、エンバク、イタリアングラスを使うものです。
アイガモ米から作った純米吟醸酒は人気が高く、特別表示米、ぎふクリーン農業表示米も市場の評価を得て高く買ってもらっています。こうなることで生産者は本当に元気になりました。
消費者とともに田植えやヒエ抜き、稲刈りを体験する羽島体験プロジェクトも5回を数え、消費者との交流を大事にしています。
千代菊潟zームページも参照してください。http://www.chiyogiku.co.jp
文責:井上守(名古屋大学大学院)
第3報告
消費者・生産者の連携による認証・表示の活用と安全安心の食づくり
斉藤 芳美(東海コープ事業連合)
食品に対する不安から、安全で安心できるものを求める消費者が多い。東海コープでは、JAS法や農水省のガイドラインで定められているものに加え、独自基準による低農薬農産物について「栽培自慢」の認証、表示を行っており、207品目にのぼっている。それは、JAS法や農水省のガイドラインの基準には達しないものの、低農薬生産を行っている生産者を評価し、認証することで、その生産活動の継続を促すものであると言える。消費者にとっても、商品選択の幅が広がり、安心できる農産物を購入することができるであろう。
しかしながら、現在、川下業者による多数の認証や表示があるが、その基準は統一されていないので、消費者に混乱を招くおそれがある。それゆえ、単に認証すればよいというわけではなく、消費者にその実を周知されるように努力することが必要であろう。
東海コープ事業連合のホームページも参照してください。http://www1.tcoop.or.jp/
文責:戸田千恵子(名古屋大学大学院)
コメンテーター
徳田 博美(三重大学) 仙田田鶴子(名勤生協)