HNF-4



 HNF-4は、ステロイドホルモン受容体ファミリー(核内受容体ファミリー)に属す転写因子で、特定のリガンドが見つかっていないオーファン受容体である。最近になり、fatty acyl-CoAがリガンドであるということが報告され、アシル基の長さや飽和度によりHNF-4の転写活性が調節を受けるようである。ヒトにおいて、HNF-4a1、HNF-4a2、HNF-4a3、HNF-4a4、HNF-4gのアイソフォームが知られている。HNF-4遺伝子の発現は、マウス胎生4.5日の原始内胚葉で発現が見られ、胎生5.5日では近位内胚葉で見られる。肝臓形成において、胎生8.5日にHNF-4a mRNAは肝憩室(前腸門腹壁内胚葉から突出した肝臓になる部分)で見られ、この発現は肝臓形成の開始と一致する。HNF-4遺伝子の発現調節機構は十分には理解されておらず、HNF-1、HNF-3、HNF-6、GATA-6により制御を受けることが報告されている。HNF-4aノックアウトマウスは、発生初期に死んでしまう。HNF-1aとHNF-4aの発現には正の相関が見られ、HNF-4aがHNF-1a遺伝子発現を調節する重要な転写因子であることが明らかとなった。一方、初代培養肝細胞においても肝臓表現型とHNF-4a遺伝子発現には正の相関が見られ、肝臓の分化表現型を決定する最も重要な転写因子のひとつがHNF-4であると推測される。上述したように、HNF-4により制御を受ける遺伝子(例えばHNF-1a遺伝子)の転写は、HNF-1aにより負の調節を受けることが知られており、これはHNF-1aとHNF-4aの直接的なタンパク質相互作用の結果によることが明らかとなっている。HNF-4aは、MODY1であることが示されており、MODY1→MODY3の経路の異常は糖尿病発症と強く関連している。
Updated 10/8/99