EHS-gel(マトリゲル)


マウスEHS肉腫の継代


 EHS肉腫を保持したマウスを麻酔下あるいは断頭で屠殺した。マウスの体全体を流水で洗った後、オスバン消毒液 、70%エタノールの順に数秒間マウスを浸した。肉腫で膨らんだマウスの後あしの皮膚をはさみとピンセットではがし、肉腫をとりまく結合織をのぞいた。ペニシリン、ストレプトマイシンをふくむ冷ハンクス液のなかに、0.5cmから1cm角の肉腫をいれた。この時血液で赤く染まってなく、かつ白すぎない肉腫を選んだ。針を付けない10mlのシリンジに肉腫の入ったハンクス液をいれ、シリンジから押し出す力で肉腫を細かく壊した。次にシリンジに19Gの針をつけ同様の操作を行いさらに細かく壊した。さらに21Gの針を使って同様のことを2回繰り返した。新しい21Gの針に取り替え、肉腫懸濁ハンクス液を吸い取る。この肉腫懸濁液をマウスの後ろ足筋肉に注射した。一本の足に0.5mlを目安にして注射した。通常1カ月ごとに継代した。

マウスEHS肉腫からEHS-gelの抽出


試薬  High Salt Buffer 3.4M 塩化ナトリウム
          0.05M Tris-HCl  pH7.4
          4nM EDTA
    200mM N-etylmaleimide(NEM)
    Extraction Buffer   0.05M Tris-HCl (pH7.4)
          2.0M  尿素
          0.15M  塩化ナトリウム
    Tris Buffered Saline (TBS) pH7.4
    MEM (Minimum essential Medium)

 すべての器具、試薬は滅菌処理をした。
 抽出当日、High Salt Bufferに1/100容のNEMを加え混合した。-80℃に保存していたEHS肉腫を5倍容のHigh Salt Bufferで、ガラステフロンのホモジナイザーを用いてホモゲナイズした。4℃、3500rpm、20分間の遠心で不溶性沈澱物を集めた。この操作を2-3回繰り返すことによって不溶性の沈澱物質を洗い、水溶性物質の混入をできるだけ避けるようつとめた。不溶性沈澱物量と等量Extraction Bufferを加え、4℃で1晩かくはんした。つぎにこれを10000xg 30分間の遠心をし、尿素可溶性の上清画分を集めた。この尿素可溶画分を4℃のTBS中で透析した。透析は3-4回繰り返した。最後に、培地を使って透析した。ここで得られたものをEHS-gelとした。使用前日まで-80℃で凍結保存した。EHS-gel中に含まれるタンパク質量を測定した。
 使用する前日、氷上にディッシュをのせクリーンベンチ中で、60mm径のディッシュ1枚に付きタンパク質1mgとなるように(100mmの場合は2.8mg)、パスツールピペットを加工して作ったスプレッダーを用いEHS-gelを薄くディッシュ表面に広げた。均一に広がったことを確認した後、37度30分から1時間静置してゲル化さたあと無血清の培地5mlを満たした。
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Updated 5/3/97