下村 吉治 (教授 医学博士)

ありふれたアミノ酸の生理機能を解明することで、これからの「食」と「健康」の向上に大きく貢献することをめざしています。

 タンパク質は20種のアミノ酸で構成されています。タンパク質を食べるということは、体内で合成できないアミノ酸を摂ることです。私たちはその中の分岐鎖アミノ酸(BCAA)という3種のアミノ酸に注目し研究を進めています。
 BCAAは珍しいものではなく、毎日食べるタンパク質に多く含まれていますが、特別な生理機能があることがわかってきました。タンパク質の材料でしかないと考えられていたのが、実はBCAAの血中濃度の上昇は、タンパク質を合成するためのシグナルにもなるのです。その結果、BCAAは肝硬変の患者さんのタンパク質合成能力を改善する薬となったのです。それだけではありません。肝硬変の患者さんはこむら返り(足の筋肉の痙攣)がよく発生するのですが、BCAAはその発生を劇的に抑えます。私たちの研究室でも、足のつる人がBCAAを摂れば症状を改善できることを経験し、スポーツをする前に飲めば筋肉痛の発生が抑えられることを実証しました。またBCAAはタンパク質の代謝だけではなく、血糖の代謝にも関わっていることが明らかにされつつありますので、国民病といわれる糖尿病を改善する食成分としても期待されています。
 今、日本は世界に例のない速度で高齢化が進んでいますが、BCAAは加齢による筋肉の衰えを抑え、元気に老いるという夢のような話を実現できる可能性すらあるのです。

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栄養生化学

下村 吉治

教授 医学博士

1983年、名古屋大学大学院医学研究科博士課程修了、同医学部助手、筑波大学体育科学系講師、名古屋工業大学工学研究科教授等を経て、2008年、名古屋大学大学院生命農学研究科教授、2009年名古屋工業大学名誉教授

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