研究概要

我々自らが観測を実施する研究対象地域は、(1)中部日本(瀬戸、北緯35°;温帯森林と比較の目的)、(2)北海道(母子里、北緯44°;北方林南限)、(3)カムチャッカ(コズイレフスク、北緯56°;比較的湿潤な北方林)、(4)レナ川中流(ヤクーツク、北緯62°;乾燥した北方林)です。

本研究での具体的目標は、以下の通りです。
  1. 各地域でのパッチスケール(数km〜10km)での水・エネルギー・炭素循環特性を明らかにします。そして、陸面過程のモデルパラメータと全球グリッド気候データとの関連を通してパラメータの空間分布を明らかにし、各地域の循環特性と環境要因に対する応答の相違を明らかにします。
  2. 環境要因と植物の生理学的応答の関係(葉:気孔開度、水ポテンシャルなど、幹:通水の遅れ、水ポテンシャル、根:吸水強度など)、森林群落構造(PAI、葉群集中度、開空度など)の時空間変動を明らかにし、パッチスケールでのモデルパラメータの有する生態生理学的意味の理解を進めます。
  3. 上記の結果と既往の研究成果に基づき陸面過程のパラメータ、特に生物圏にかかわるパラメータの時空間分布を明らかにします。そして、陸面過程モデルに1、2の結果を組み込み将来の水・エネルギー・炭素循環特性の変動を予測します。
陸面水循環解析グループ
現地観測により各観測地域での水・エネルギー・炭素循環特性を把握し、そのモデルパラメータの導出を行います。また、森林動態解析グループと共同で、植物生理特性の個葉から群落へのスケールアップ、森林構造の変動による空気力学的特性の変動や融雪・凍土融解に深くかかわる森林内微気象環境の変化を明らかにしてゆきます。そして、既存データセットを利用し水・エネルギー・炭素循環にかかわるモデルパラメータの地理的分布情報を構築し、その植物生理学的、森林生態学的妥当性を検証します。

ロシア:ヤクーツク(サハ共和国)
国内:母子里(北海道)・瀬戸(愛知県)

森林動態解析グループ
森林圏での水・エネルギー・炭素循環特性の把握に欠かせない光合成、蒸散などの植物生理にかかわるパラメータ、LAI、樹高、葉群集中度など森林構造にかかわるパラメータの取得を現地観測により行い、その時空間分布を明らかにします。また、衛星データを利用し森林の生態学的パラメータの抽出を行います。個葉、群落スケールでのモデルパラメータと実際の生態生理特性の分布特性の妥当性を検証します。

ロシア:ヤクーツク(サハ共和国)・エッソ(カムチャツカ)
国内:母子里(北海道)・瀬戸(愛知県)

水循環−森林動態モデリンググループ

From Yamazaki et al.(2004)
陸面での水・エネルギー・炭素循環モデルに上記の2研究グループが提供するモデルパラメータの地理的分布情報を利用し、温帯−亜寒帯での陸面での水・エネルギー・炭素循環特性の現況把握と環境変動による諸循環特性の変動予測を行います。また、これらの環境変動による森林動態予測とこれに伴う水循環特性の変動の予測を行います。