水田土壌生態系各部位に生息する微生物のPhylogeny
水田土壌生態系は、表面水層、作土層土壌、作土下の下層土、から構成され、作土層土壌はその酸化還元状態から表層数mmの作土酸化層その下の作土還元層から成り立っている。また、水田生態系においては、浸透水がこれら各層を上から下に結びつけている。表面水、作土酸化層・還元層、下層土、浸透水は、微生物にとってそれぞれ異なった生育環境である。
加えて、作土層には、水稲根系が発達し、多量の刈り株・残根や稲ワラが鋤込まれ、これらの部位にもまた、特有の微生物群集が生育している。
本研究では、水稲生育期間中における、1)表面水、2)作土酸化層、3)還元層、4)水稲根、5)植物遺体(稲ワラ)、6)浸透水、の各部位に生育する微生物群集を系統分類学の視点から比較し、その特徴を明らかにすることを試みた。
なお、微生物群集の解析に当たっては、水田各部位から採取した試料中のDNA・RNAを抽出・生成し、各種微生物に特異的なプライマーを用いてPCR増幅した後、PCR産物を変成剤濃度勾配電気泳動法(DGGE法)により塩基配列の違いから分画して、DGGEバンドパターンから試料間の微生物群集構造の類似性を比較するとともに、特徴的なDGGEバンドを切り出し、塩基配列を解読して、試料に特徴的な微生物を推定した。