研究の背景

 地球の温暖化は、深刻な地球環境問題である。温室効果ガスとしては、二酸化炭素(CO2)メタン(CH4)亜酸化窒素(N2O)フロン、が挙げられるが、そのうちでもわが国の農学者が特にメタンに注目するのは、メタンが

  • 1.温室効果に12%関与し、二酸化炭素に次いで大きい、
  • 2.大気中に約1.7-1.8ppm存在し、その濃度上昇率が年間約0.8-1.0%と他の温室効果ガスに比較して高い、
  • 3.温室効果をもたらす作用が、二酸化炭素に比べて20-40倍も高い
  • 4.わが国農業の基幹をなす水田からの発生量が、自然湿地、石炭・石油・天然ガスの採掘・輸送・使用時の漏れ、反芻動物腸内からの発生量に次いで多く、世界の水田から発生するメタンの量は発生総量の約12を占める、

などのためである。

 これまで世界各地の水田土壌において多数の研究が実施され、世界の水田から発生するメタンの総量が明らかになってきた(表1)。また、土壌の種類、水稲品種、肥培管理、水管理等により、水田からのメタンの発生量が大きく変動することが明らかにされている。

 しかし、水田から発生するメタンの起源、生成したメタンの土壌中での動態に関してはこれまでほとんど研究されてこなかった本研究は水田土壌学の立場から水田土壌中でのメタンの生成その後の動態を解明し、地球温暖化対策に基礎的知見を提供することを目的としたものである。

水田から発生するメタンの起源、メタンの土壌中での動態にもどる