<主な研究材料(シアノバクテリア)の紹介>

シアノバクテリア(ラン藻)とは?

シアノバクテリアは、植物と同じタイプの酸素発生型光合成を行う原核生物で、30〜25億年前に地球上に出現し、初めて酸素発生型光合成を始め、地球上に大繁殖し、それまでの嫌気的な大気を現在に近い酸素を豊富に含む好気的大気に変えていったと考えられています。この数億年の間にラン藻は、実に多様な進化を重ねて、形態的にも代謝的にもきわめて多彩な能力を有する原核生物の一グループとなったようです。また、他の細胞との内部共生によって現在の葉緑体の祖先となったと考えられており、原核生物から植物に至る光合成の進化を考える上で、非常に重要な生物です。

当研究室で主に使われているシアノバクテリア4種の写真です。

 

シアノバクテリアLeptolyngbya boryana (Plectonema boryanum)について

シアノバクテリアの研究というと、ゲノム情報が光合成生物として世界で初めて決定されたSynechocystis sp. PCC 6803が多く用いられてきました。その後ゲノム解析が進み、現在、40種近くのシアノバクテリアでゲノムが決定されています。

Leptolynbgya boryana (旧名Plectonema boryanumにはSynechocystis sp. PCC 6803にはない特徴があり、ユニークなシアノバクテリアの材料となっています。現在、ゲノム解析がほぼ完了し、ゲノム情報に基づく研究を展開しつつあります。

L. boryanaは、シアノバクテリアの分類ではセクションIIIのグループに属しており、形態的には分岐していない糸状性で、ヘテロシストと呼ばれる窒素固定専門の細胞を分化しないタイプのシアノバクテリアです。このシアノバクテリアをもちいて、窒素固定の研究も行っています。

 

特徴1 〜完全暗所での生育能〜

L. boryanaは、完全な暗所であってもグルコースなどの糖があれば従属栄養的に 生育することができます。光合成関係の変異株を単離する上で、この性質は重要です。光合成能を欠失した変異株でも従属栄養的な生育により単離が可能となるわけです。Synechocystis sp.PCC6803もこれに近い能力を持ってはいますが、完全に暗所に保つと生育できず、1日10分程度の光照射を要求します(この現象は、"Light-Activated Heterotrophic Growth"略してLAHGと呼ばれています)。藤田らは、L. boryanaの野生株からより従属栄養能の高い(暗所でより早く生える)株dg5を単離して、この株を活用しています。

 

特徴2 〜形質転換系〜

 L. boryanaは、エレクトロポレーションによってDNAを細胞へ導入し、ゲノムとの相同的組換えによって特定の遺伝子が破壊された変異株を得ることができることが、藤田らによって示されています(Fujita et al. 1992)。また、シャトルベクター系も開発しております。この系を活用すると、本来破壊することができないゲノム上の遺伝子も、シャトルベクターであらかじめ別のコピーを保持しておくことにより、破壊することが可能となります。この方法により、フェレドキシン遺伝子petFをトウモロコシのフェレドキシンcDNAにより相補して、世界で初めてpetF破壊株単離に成功しています(Kimata-Ariga et al. 2000)。また、ヒメツリガネゴケの葉緑体DNAにコードされる推定DPORサブユニットが、DPORとしての活性を有することを、このシアノバクテリアのDPOR欠損株への形質転換を利用して実験的に証明しました(Yamamoto et al. 2011

 

特徴3 〜窒素固定系〜

 L. boryanaは、窒素固定能を有しているので、培地中に有機窒素が欠けていても、ニトロゲナーゼにより空気中の窒素をアンモニアに転換できるので生育できます。L. boryanaはニトロゲナーゼを酸素から保護する機構が完全ではないため、このような窒素固定的生育は、微好気的条件に限られています。最近、L. boryananif遺伝子クラスターを同定し、窒素固定の研究を開始しました。
 

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