<研究の紹介>

 

シアノバクテリアの窒素固定 

 既知のシアノバクテリアの約半数は、空気中の窒素(N2)を窒素源として利用できる窒素固定能をもっています。窒素固定反応を担うニトロゲナーゼという酵素は、その特有の金属クラスターが酸素に触れると速やかに破壊されてしまうため、O2に非常に脆弱な酵素となっている。窒素固定能をもつ生物は、ニトロゲナーゼを嫌気的環境に保つために多様なメカニズムを進化させてきました。シアノバクテリアは、環境のO2に加えて光合成で自ら作り出すO2に対しも防御する必要があるため、他の生物とは異なる何か特別なメカニズムをもっているのに違いありません。最も有名なメカニズムは、ヘテロシスト(heterocysts 異型細胞)と呼ばれる特別な細胞を分化するというもので、アナベナ(Anabaena)がその代表例です。しかし、ヘテロシストを分化せずに窒素固定を行うことができるシアノバクテリア(nonheterocystous cyanobacteria)も多数存在し、多くの環境において窒素供給に重要な役割を担っていると考えられています。Leptolyngbya boryana(レプトリンビア ボリアナ)もそのようなシアノバクテリアの一種です。私たちは、L. boryanaのゲノムに窒素固定に関連する遺伝子群が集中して存在する窒素固定遺伝子クラスターを見つけ、この遺伝子クラスターに窒素固定遺伝子群の発現を制御するマスターレギュレータ遺伝子cnfRcyanobacterial nitrogen fixation regulator)が存在することを見出しました (Tsujimoto et al. 2014)。遺伝子破壊株の形質などから、CnfRは低酸素を感知して窒素固定遺伝子群の転写を誘導する転写活性化タンパク質としてはたらくことがわかりました。また、この遺伝子クラスターには、低酸素条件下でもクロロフィル供給が可能となるように別の転写制御タンパク質ChlRがコードされていることも明らかになりました。

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