森の中に落ちている種子はどこから運ばれてきたのでしょうか?
近くの成木(花をつけ、種子をつくる大きな木)が母親なのでしょうか?また、父親(花粉親)はどこにいるのでしょうか?
植物は自らは動けないので、花粉と種子の散布により遺伝子を移動させます。
花粉や種子は虫や鳥などの動物、風、重力、水などによって散布されていきます。
このような花粉や種子の散布を把握することは、森林の更新過程や維持機構を考えるうえで重要であると考えられます。また、森林の孤立や分断化、個体数の減少が花粉や種子の散布にどのような影響を与えているかを評価することは、森林の保全において重要なテーマとなっています。
花粉や種子の移動を直接的に観察することは非常に困難ですが、種子や稚樹、成木の遺伝子を調べることでそれらの親子関係を明らかにすることができます。
そして、種子や稚樹の種子親と花粉親の位置を特定することで、種子と花粉の散布を追跡することができます。
本研究室では、照葉樹林の主要樹種であるスダジイ、ウラジロガシ、ヤブツバキについて分子生態学的研究を行っており、それらの樹種の潜在的な種子散布と花粉散布について明らかにしつつあります。
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照葉樹原生林に生育するウラジロガシ。
ウラジロガシの花粉は風によって散布され、成熟した堅果(どんぐり)は枝から落下して母樹の周りで発芽します。
遺伝子レベルの解析で花粉親や種子親を推定し、遺伝子流動のパターンと集団内の遺伝構造が明らかになってきました。
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冬季に咲くヤブツバキの花粉は、メジロやヒヨドリなどの鳥が運んでいるといわれます。鳥媒の樹種では風媒の樹種とは異なった交配パターンがみられると考えられます。
照葉樹原生林のヤブツバキを対象に、遺伝マーカーを用いて広範囲の花粉流動について調べています。 |