植物分子育種分野 名古屋大学生物機能開発利用研究センター

イネ科エネルギー作物への新たな試み ソルガムの研究

図1 飼料用ソルガムの収穫(沖縄県大宜味村)

ソルガム(Sorghum bicolor (L.) Moench)は、世界各地で栽培されているアフリカ北東部が原産の大型イネ科C4作物で、コムギ、イネ、トウモロコシ、オオムギに次ぐ生産高第5位の作物である。日本では室町時代以来、食用としてタカキビ、コウリャンという名前で栽培され、また、糖汁採取のためサトウモロコシ、トウキビ、ロゾクという名でも栽培されており、日本の農業にも馴染みのある作物である.ソルガムは、草丈が4m以上にも達する品種もあり、茎葉部バイオマスはイネの10倍以上にもなる(図1)。国内でも大規模栽培における栽培体系と機械化収穫が確立しており、家畜飼料用の営利栽培が行われている(図2)。

我々がソルガムに注目している理由は二つある。第一は、日本のエネルギー問題である。世界各国では、温暖化緩和に向けた低炭素化、再生可能エネルギーへの転換を目指し、二酸化炭素を吸収する植物、特にサトウキビやトウモロコシを使ったバイオエタノール生産が行われている。バイオエタノール生産法として、セルロースを一度糖化した後、発酵する方法も開発されているが、より低コストで効率的なのは、糖度の高い搾汁液を直接発酵する方法である。しかし、サトウキビのバイオエタノール化は、砂糖価格に影響を与えたため社会問題となった。これを打開するためには、新たな植物の科学技術的「発掘」が必要である。そこで我々が注目したのは、砂糖の原料としては利用されないソルガムである。ソルガムの品種には高糖性のものがあり、稈に蓄積される汁液は糖度が20%近くにもなる。近年、エネルギー作物の候補として、いくつかの大型植物がしばしば話題にのぼるが、これらの候補の中で高糖性搾汁液を得られるのはサトウキビと高糖性ソルガムだけである。

図2 ソルガムの大規模栽培(沖縄県大宜味村)

第二は近年、ソルガムの全ゲノム配列が決定されたことであり、ソルガムの分子遺伝学的アプローチや分子育種が現実のものとなったことによる。特にソルガムはイネとのシンテニーが高いため、イネゲノムを活用した遺伝子解析、分子育種技術など、それら全てをソルガム研究へ応用できる基盤が整った。つまりソルガムは、これまで我が国が蓄積してきたイネなどモデル植物研究の科学的・技術的知見を「統合」し、研究開発成果を社会へ「実装」するための最適なツールである。このような背景の中で、アメリカなど国々でも、ソルガムのエネルギー利用を想定した研究が始まっているが、もし今、我々がソルガムのエネルギー利用に関わる研究に力を注げば、この新しい研究分野で世界をリードすることができる。

現在、我々は沖縄のベンチャー企業との共同研究で、ガンマ線によって誘起した高糖性ソルガム突然変異体の大規模展開を行い、変異体のパネル化を目指している。また、ソルガムの高糖性や耐倒伏性に関わる節間伸長性のQTL解析も進めている。