食品や環境因子など生理活性成分に対する上皮組織の応答機構解析
研究内容
乳の産生と乳成分の機能、それによる乳児の発達制御について、上皮細胞からなる組織を中心に研究しています。
- 乳腺による乳タンパク質の産生とその制御
乳成分を産生する細胞は、乳腺実質の上皮細胞です。乳児の発育に必要な栄養源となる乳タンパク質、乳脂質、乳糖や乳オリゴ糖などを大量に生産する必要があるため、出産後の乳腺上皮細胞は非常に高い生産能力を持っています。我々は乳腺上皮細胞での乳成分産生制御について研究を行っています。これまでに、乳腺上皮細胞から分泌されるタンパク質milk fat globule-EGF factor 8(MFG-E8)が、乳中の脂肪球や細胞外小胞と結合すること、MFG-E8/細胞外小胞複合体が離乳時期の乳腺上皮基底側へと局在することを明らかとしています。乳脂肪球表面に結合したMFG-E8は乳腺内での脂肪球品質管理に、MFG-E8/細胞外小胞複合体は乳タンパク質発現を調節すると考えています。生理活性物質により乳腺上皮細胞の高い物質産生能力を調節する方法の解明は、細胞の工業的利用に応用が期待されます。
その他、以下のテーマについても研究をしています。
乳成分の乳児消化管での機能
乳汁は乳児の成長に必須かつ十分であり、栄養素の供給源のみならず、個体として未成熟な新生児に対する成長促進補助因子、生体防御補助因子としての役割を持つと考え、乳汁成分の生理機能に関する研究を行っています。人乳には100種以上のタンパク質が含まれていますが、乳児が摂取した乳中タンパク質が生理作用を示すためには、それらがどのようにして消化吸収され、標的組織へと作用するかが重要です。我々は機能性タンパク質であるラクトフェリンとMFG-E8に着目し、乳児腸管での消化吸収機構およびその生理機能を研究しています。
乳児期から離乳期の腸内細菌叢形成制御と宿主健康への影響
生後初めて大量の腸内細菌が定着する離乳期には急激に免疫系が活性化され、病原菌への感染防御を準備する一方、共生細菌や食物抗原による過剰な免疫応答を抑制するようになります。我々は乳児期から離乳期の腸内細菌がどのように宿主の組織に作用し、健康に影響するか研究しています。