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名古屋大学大学院
生命農学研究科
森林・環境資源科学専攻
木材工学研究室

〒464-8601
名古屋市千種区不老町
生命農学研究科
A館東研究棟386号室


木質構造要素の性能

古建築仕口接合部のモーメント抵抗性能

  伝統構法建築物の構造の特徴として,柱梁からなる軸組構造が挙げられる.このような建築物に大きな負荷が与えられた時,各部材の各部分に力を分散することで抵抗力を発揮する.接合部を構成する仕口部分は,必ず断面の欠損を有するため,建築物の破壊はこの箇所から発生する可能性が非常に高い.したがって,伝統的構法に見られる接合部の力学挙動を解析することは,これらの建築物の安全性の確立につながると考えられる.そこで,「伝統的構法の設計法作成及び性能検証実験検討委員会(立命館大学教授・鈴木祥之委員長)」の研究プロジェクトの一環として,古建築から採取したほぞ接合部の力学試験を行い,荷重と変形角(柱材の傾き)の関係を調べた.試験体の入手にあたり,古建築解体の際に接合部付近の柱梁を斜材で固定し,なるべく負荷をかけない状態で運搬,及び試験装置への設置を行った.長ほぞを有する試験体は,既往の新材ほぞ接合部の力学試験結果と比較してもほとんど見劣りしなかった.一方,短ほぞを有する試験体はほとんどモーメント抵抗性能を発揮しないという結果となった.(小川敬多)


古建築から採取した柱・梁接合部の加力実験

応力波を用いた木質構造部材の力学性能評価

  我が国には,古くからの寺社や古民家等の木造建築物が多く残っている.その木造建築物は世界的に見ても,木造建築における技術や資源,文化の面において非常に重要なものである.そこで古建築の保存や,その木質構造部材をリユースすることの重要性が挙げられる.古建築の保存・部材のリユースをするためには,地震や台風などの自然災害の多い日本では,その安全性を科学的に示す必要がある.そこで,構造部材として使用されている材の力学性能評価を正しくそして非破壊的に行わなければならない.
  木材の非破壊検査は今日までに多くの研究がなされ,多くの手法が提案されている.その中でも,音波法は測定が簡便であることや,機器が比較的小型で携帯が可能であるため木質構造物を対象とした場合には特に非常に有用な手段である.音波法では,伝播速度や波形の変化などの伝播特性から物質の変形あるいはひずみを伴った物理的過程を観測する.現在,木質構造物を対象に音波法を用いて行われている非破壊検査では,相対的な伝播速度比較による内部欠陥や生物劣化の推察,伝播速度と文献値密度を用いたヤング率の推定,製材の既存データベースを用いたシミュレーション法によるヤング率の推定などがある.さらに,音波法は唯一構造物の状態で測定を行うことができる手法である.しかし,材料の個体内変動や,測定距離,欠損などの影響は未だ十分に解明されていない.また,一般に使用中あるいは使用済の構造部材は切欠等の欠損を有しており,これを構造部材として強度評価するためには,欠損を有した状態で評価する必要がある.
  応力波は共鳴式のハンディータイプ・伝播時間測定器(FAKOPP)の端子を木材に接触(刺して)させて打撃することで波を発生させもう片方の受信端子で応力波伝播速度を測定する.木材が構造部材として使用されている状態では写真に示すように欠損(写真では切欠)を有している.その欠損を挟むようにして応力波を伝播させその伝播速度を測定することで,その木材そのものの強度や切欠を有した状態での剛性を知ることができる.(取違俊弥)


切欠き材の応力波測定実験

梁端仕口のせん断試験

 
木造建築における構造材(集成材,単板積層材など)は,様々な形状の接合金物を使用する場合が多い.例えば,柱・梁接合のような場合には,梁材のせん断を問題にする場合が多いが,梁材のせん断よりも先に柱側に割裂を生じ,梁材のせん断に至らない場合がある.これを防ぐような仕組みを考え,構造材料としての国産スギ材の利用促進と自在な活用ができるような金物工法の普及の一助とするため,名南製作所とともに実証実験を行った


梁端仕口のせん断試験

伝統的構法による構造要素の復元力特性

 
現在の木造建築は,昭和25 年に初めて制定・公布された建築基準法に従って造ることが義務付けられており,地震力に対する主要な構造要素として筋違を使用するものとし,その量的基準を設けている.筋違構造は,力を限られた部材や接合部に集中させること,木材の繊維直交方向の応力を引き起こすことなどの力学的な問題に加えて,設置部は開口をとれず必然的に壁構造になるなど,日本の気候風土に適った開放的な住まいを造るのが難しいという問題を内包している.このような問題に対応するものとして,従来顧みられることの少なかった伝統的な構法が見直されている.一方,我が国の木材生産量は低迷を続け,国産材の需要拡大が求められているなかで,木材の地産地消,いわゆる地域材による家作りが関心を集めている.その際に,地域の気候・風土に適した居住環境を実現するためには,地域に根づいてきた伝統構法を参考にすることが好ましいと考えられる.このような背景から,「あいちの木で家をつくる会」と協力し,伝統構法の長所を取り入れた地域材による部材の標準化とそれに対応した丸太・製材の生産システムを結びつけ,地域材を用いた家づくりを普及させることを目標として,伝統構法による古民家を調査し,その中から抽出した3種の伝統構造要素に関してせん断耐力試験を実施し,力学挙動を解析した.


差し鴨居構造の水平加力実験



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