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名古屋大学大学院
生命農学研究科
森林・環境資源科学専攻
木材工学研究室

〒464-8601
名古屋市千種区不老町
生命農学研究科
A館東研究棟386号室


木材の力学物性の解明

針葉樹材のポアソン効果に及ぼす細胞壁微細構造の影響

 材料に引張荷重を与えた場合,荷重方向には伸びるが,荷重垂直方向には縮む.逆に,材料に圧縮荷重を与えた場合,荷重方向には縮むが,荷重垂直方向には伸びる.これをポアソン効果と呼び,縦ひずみに対する横ひずみの比がポアソン比として定義される.ポアソン比は,ヤング率やせん断弾性係数と同様に独立な弾性定数である.木材や木質材料のポアソン比に関する研究例は少ない.そこで,本研究では木材のポアソン比には,どのような因子が影響を及ぼしているかを細胞壁レベルで明らかにすることを目的とした.
 MFA,セルロース量: 木材の細胞壁は,主にセルロース,ヘミセルロース,リグニンの3つの成分で構成されている.このうちセルロースは,重合度が数千〜1万ほどのβ-1.4グルカン鎖を最小単位とし,木材細胞壁ではセルロースが数十本集まって1本の結晶性繊維を作っている.これをセルロースミクロフィブリル(以下CMF)と呼ぶ.CMFは非常にヤング率が高く,木材の力学的性質に大きく影響を及ぼす.また,細胞壁には,細胞間層や一次壁および,外層,中層,内層からなる二次壁が存在する.二次壁中層(以下S2層)の体積が細胞壁中に占める割合が最も高いため,S2層が細胞壁の力学的性質に大きく影響すると考えられる.CMFが長軸から傾いた角度はミクロフィブリル傾角(以下MFA)と呼ばれ,細胞壁のヤング率や強度はS2層のMFAに強く依存する.本研究では,引張試験から得られたヤング率,ポアソン比と,MFA,セルロース比との関係を調べた.MFAは,X線回折装置を用いてCave法によって算出した.セルロース比は,主成分分析を行い算出した.
 含水率: また,木材の強度特性は含水率依存性を持つことが知られている.同一試験体の平衡MCを変化させ,その都度ポアソン比やヤング率を縦圧縮試験により調べた.これは,含水率の違いにより細胞壁構造が変化することを狙ったものである.(水谷真夕)


木材の引張クリープ実験

古材の部分横圧縮特性

 木材に部分的な圧縮力を与えたとき,直接載荷されていない部分でも巻き込まれたような変形が生じることは,実験的,あるいは経験的に明らかである.このような場合,木材が示す抵抗力は全面圧縮時と異なり,大きくなることが報告されている.したがって,部分圧縮時の力学性能を評価するにあたっては,全面圧縮時とは異なる方法が必要になる.このことに関して,過去に様々な理論が提案されている.それらの多くは,部分圧縮時に生じる非載荷の部分の変形に相当する剛性・抵抗力を,載荷版直下の変形による剛性・抵抗力に足すことで導出されている.例えば,棚橋らは非載荷の部分の表面変形を,パステルナーク・モデルに基づき指数関数で表現した.その過程で定められた特性値は,全面横圧縮,及び部分横圧縮試験から得られることができる.また,木材は経年にしたがって材質が変化する可能性が指摘されている.そこで,古材の圧縮試験を行い,この木材のめり込み理論に基づいた特性値を調べた.(小川敬多)


古材の部分横圧縮実験

古材の実大せん断性能

 古材の再利用においては,切欠等の欠損が当初より存在する場合が多いため,せん断強度にも留意すべきと考えられる.しかし,古材のせん断性能について定性的な理解はまだ定まっておらず,また実大材についてはほとんど知見がない.そこで,古材の実大せん断性能を調べることを目的として,アカマツの新材と古材(解体梁材)を対象とした実大せん断試験を行った.曲げ−ねじり複合振動法によりせん断弾性係数を,また実大椅子型せん断試験によりせん断強度を測定した.古材の見かけのせん断弾性係数は切欠等の欠損が影響して新材を下まわった.せん断強度と密度の関係は,新材,古材ともにR=0.75程度の比例関係を示し,密度は3Pワイブル分布,せん断強度は対数正規分布を示した.せん断強度について,古材と新材の差異をモンテカルロシミュレーション法とKS検定により調べたところ,両者間に有意な差は認められなかった.(石松幹子)


古材の実大椅子型せん断実験(森林総合研究所)

曲げ荷重下における木材の疲労強度特性

 材料は荷重を繰り返し受けると,「疲労」と呼ばれる現象によって損傷を受ける.長期的な繰り返しの負荷が木材に与える影響を評価することは,特に土木・建築分野における木材利用を考える上で重要である.本研究では,曲げの荷重によって木材に繰り返しの負荷を与える疲労試験を行い,負荷回数,あるいは時間に伴って変化していく力学特性を調べた.また,疲労試験とは別に,継続的な負荷によって材料に損傷を与えるクリープ試験を曲げの荷重にて行い,疲労試験との相互関係を調べた.
 疲労寿命の予測: 疲労寿命とは,破壊までに要する繰り返し負荷の回数であり,その長短は材料に与える応力の大きさに依存する.応力と疲労寿命の関係は,材料の力学的な耐久性能の評価において主要な検討項目の一つであり,材料ごとに異なるこの関係を予測することが疲労の研究において最大の関心事の一つである.本研究では,大きく分けて3つの観点から疲労寿命の予測を試みた.一つはPalmgren-Miner則の適用であり,金属材料の分野で一般的に知られているこの予測式を木質材料に応用した修正則が木材の二段階曲げ疲労試験に適用可能であるかを検討した.また一つに繰り返し負荷によって木材に累積していくエネルギーを評価し,疲労寿命との関係を調べた.最後の一つは物理化学の絶対反応速度理論に基づいた応力と疲労寿命の関係のモデル化であり,樹種や負荷波形,負荷周波数などの異なる曲げ疲労試験における適用を検討した.
 疲労限度の評価: 鉄鋼などの材料では,疲労寿命が無限大に長くなるような応力が存在することが知られている.この応力のしきい値は「疲労限度」と呼ばれており,構造物の設計をする上で有用な情報となる.しかしながら,木材および木質材料,あるいは金属材料の中でもアルミニウム合金などでは疲労限度が明瞭に現れないことが知られている.したがって,これらの材料における低応力域での力学特性,ひいては疲労限度を調べることは疲労の研究において重要な検討項目である.特に生物材料である木材は,等方性の金属材料とは異なり異方性であるだけでなく,粘弾性材料であるため,低応力域の疲労特性の評価は容易ではない.本研究では,そのような木材の低応力域の疲労特性に対して,エネルギーロスの解析に基づいたアプローチを行った.(大矢彩加)


曲げ疲労試験

構造用木質面材料の面内せん断疲労強度特性

 
構造用の木質面材料を対象とした面内せん断荷重による疲労強度特性に関する研究の一環として,OSB のせん断疲労挙動について検討した.また,釘のせん断疲労特性とともに面材張り耐力壁のせん断疲労挙動に関する理論的推定に資するための基礎データとした.ASTM のTwo-Rail Shear 法に準ずる方法により,面内せん断疲労試験を数段階に変化させた応力レベルで行った.173 号室設置の床置き型電気油圧サーボ式疲労試験機を用いた.


木質面材料の面内せん断疲労試験



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